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ロシア政治

スパイを国民のヒーローに...プーチンの巧妙な「心理作戦」の真相

GONZO INTELLIGENCE

2025年1月16日(木)09時41分
ブレンダン・コール(本誌記者)

だが、いくら捕まえてもスパイ交換で送還されれば本国では英雄扱いだ。

パブロ・ゴンサレス(本名パベル・ルブツォフ)も、8月1日にモスクワの空港でプーチンの出迎えを受けた。彼はロシア軍参謀本部の工作員で、スペインのジャーナリストを装ってポーランドで活動していた。

それでも帰国時には「スター・ウォーズ」のTシャツ姿で現れ、プーチンと固く握手を交わしていた。

「プーチン政権のために西側諸国で罪を犯したロシア人は英雄だという国内向けの強烈なメッセージ」だと指摘するのは、エストニアの国防・安全保障国際センターのマレク・コフ。

「ロシアは何十年も前から欧州大陸でスパイ活動を行っている。当時の欧州はロシアを商売の相手と見なしていたが、ロシアは一貫して欧州を敵と見なし、その力をそぎ、従属させることを目指している」


そして今は、外国で捕まったがスパイ交換でロシアに帰還した者たちを宣伝戦の道具として使っている。コフに言わせれば、「たとえ犯罪者でもロシアは彼らに高位の公的な地位を用意しているぞ、というのが外国向けのメッセージだ」。

それだけではない。旧東欧圏の諸国は先に、NATO条約第5条の集団防衛の原則をあざ笑うようなロシアの「ハイブリッド」作戦が一段と活発化しているとの警告を発した。

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