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中国経済

中国、債務拡大しても景気対策強化へ...トランプ関税に対抗

2024年12月11日(水)19時28分
甘粛省酒泉市のホース接続器具工場

中国共産党は12月9日、経済政策について過去10年超でも屈指の「ハト派」的な声明を出し、米次期政権による関税の影響に対抗するために総力を挙げる構えを示した。甘粛省酒泉市のホース接続器具工場で10月撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)

中国共産党は9日、経済政策について過去10年超でも屈指の「ハト派」的な声明を出し、米次期政権による関税の影響に対抗するために総力を挙げる構えを示した。

共産党・中央政治局会議の後に出された声明で指導部は、「適度に緩和的な」金融政策と「より積極的な」財政政策に転換すると表明した。


 

中国人民銀行(中央銀行)は過去14年間、金融不安定化のリスクを避ける「穏健な」政策姿勢を貫いてきた。この間、政府部門と家計、企業を合わせた総債務は5倍超に膨らみ、国内総生産(GDP)は約3倍に拡大した。

中央政治局会議が今回メッセージを転換したことは債務を一段と膨らませ、少なくとも短期的には金融リスクよりも経済成長を優先する姿勢を示すものだ。

スタンダード・チャータードのグレーターチャイナ・北アジア担当主席エコノミスト、シュアン・ディン氏は「穏健(な政策)から金融緩和に移行したのは大きな転換だ」とし、「大いに想像をかき立てられる」と語った。

北京大のタン・ヤオ准教授(応用経済学)は、成長が減速すれば債務返済は一層難しくなるため、政策転換は必要なものだとの考えを示した。

ガベカル・ドラゴノミクスの中国調査副ディレクター、クリストファー・ベダー氏は「指導者らは債務の対GDP比率が一段と拡大するという事実と、多かれ少なかれ折り合いをつけた」とし、債務比率は「拘束的な制約要因」ではなくなったと語った。

人民銀行がどの程度の金融緩和を実施し、財務省が来年どの程度債務を増やすかは不明だ。ただアナリストらは、こうした政策が中国政府に恩恵をもたらすと予想している。

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