トランプが既存秩序を破壊し「自由主義の西側世界」が消える前に
THE END OF THE LIBERAL WEST
アメリカの自由民主主義は致命的打撃を受けている。大西洋の両岸で圧力にさらされる一方の自由民主主義が生き残る保証はない。リベラルな西側世界の頂点にアメリカがいないなら、そこに未来はあり得ないだろう。
トランプ次期政権では、上下両院で共和党が多数派だ。保守派が過半数の米連邦最高裁は今年7月、2020年大統領選の結果を覆そうとした疑いで起訴されたトランプの裁判をめぐって、在任中の公的行為に免責特権を認める判断を下した。トランプが自由民主主義を、非自由主義的な寡頭制(オリガーキー)に変換する動きを阻むものはない。
欧州の民主主義国は軍事費の負担を増やすよう、さらに迫られるだろう。一方でトランプはEUの強化に無関心で、アメリカの暗黙の支援なしに単独で前進する能力がEUにあるかは疑問だ。EUを牽引し続けてきた仏独という両輪はもはや機能せず、再び駆動するかも分からない。
もう1つの大問題はイスラエル・パレスチナ紛争だ。イスラエルの現政権はヨルダン川西岸の併合を急ぐのか。イランに対してどんな行動に出るのか。その先には、中東の大規模戦争、和平どころか持続的停戦も期待できない暴力的な地域再編成が待ち受けているとしか思えない。