「患者の命より自分の利益...」揺れる韓国医療、研修医ストライキが招いた悲劇の実態
KOREAN DOCTORS ON STRIKE
患者の命より自分の利益
こうした問題の背景には、さらに厄介な事情もある。韓国では、医学部に進学できるのは裕福な家の子供で、入試に強い学生だけだ。現状では医学生の80%が、所得水準上位20%の出身とされる。
概して先進諸国では、さまざまな社会経済的背景を持つ若者が医学部に進めるような体制が整備されており、入試に当たっては仕事への情熱や倫理観、心理的適性が考慮に入れられている。こうした資質は臨床医にも研究医にも不可欠だからだ。
対して、韓国の医師は富裕層の出身者ばかり。結果、利己的でエリート意識の強い人間の集まりになる。ある著名な医科教授が言っていた。今の医者は「この国の医療制度が抱える問題は全て政府のせいだという被害者意識を持ち、排他的な集団内で自分たちに都合よくデータを歪曲することを正当化する。それを繰り返しながら、最後にはそれを多数派の信条にしてしまう」。だから彼らに「妥協」という言葉はないそうだ。
研修医のストに加え、医学生の95%が授業への出席を拒んでいる。結果として単位不足になり、来期に再履修することになれば大学側の負担が増え、新入生の増員どころではなくなると考えるからだ。要するに彼らは、他人が自分たちよりも楽して医者になれるのは不公平だと信じて疑わない。