「患者の命より自分の利益...」揺れる韓国医療、研修医ストライキが招いた悲劇の実態
KOREAN DOCTORS ON STRIKE
さらに悪いことに、残った数少ない専門医は大都市圏の大手病院に集中する。地方には医療の空白が生じ、予防可能な死亡例が増えている。
この問題に確実に対処する方法は、公立の医科大学を設立し、学費を全額免除にして育てた医師を政府が雇い、一定期間、命に関わる診療科や地方病院での勤務を義務付けることだろう。だが韓国の医師たちは、これに一貫して反対してきた。
そこで、尹政権は次善の策を提示している。必要不可欠な医療サービスについて政府の定める診療報酬を引き上げ、医師たちが困難だが重要な診療科にとどまるインセンティブを与える、地方の病院にとどまる医師に特別ボーナスを支給する、などの対策だ。しかしストライキ中の医師たちは、政府が医学部の定員増を撤回しない限り、他の選択肢の議論には応じない構えだ。
どんなインセンティブを導入したところで、医師たちは結局、儲かる分野に吸い寄せられる。そうであれば、いっそのこと美容整形や皮膚科といった人気分野にもっと多くの医師を送り込み、市場を飽和状態にしてしまえばいい。供給が増えて需要が変わらなければ、医師1人当たりの収入が減るのは自明の理。そうなれば研修医たちも将来の進路を決める際に、もっと別の診療科を検討するかもしれない。