最新記事
極右

オーストリア総選挙で「ナチス礼賛」の自由党が第1党、背景にコロナ禍で政府の規制より「個人の自由」を擁護

Europe’s Far Right Is Now Its Establishment

2024年10月10日(木)17時24分
ポール・ホッケノス(ベルリン在住ジャーナリスト)

オーストリアの右傾化と欧州全体への影響は表層的ではない。この選挙結果を「抗議票」や漠然とした政治批判と見なすべきではない。キクルは極右の中の極右であり、人々の醜悪な本能を刺激する。彼の勝利は、欧州の極右勢力が1990年代から描き続けてきたシナリオに新たな1ページを書き加えた。

ウィーンの研究機関、オーストリア・レジスタンス資料センターのアンドレアス・クラネビッター所長は、「この数十年で、今ほど国民の間で人種差別主義や反ユダヤ主義が高まり、外国人を嫌悪し、移民に敵意を抱く人が増えている時はない」と述べる。


クラネビッターによれば、自由党はこの傾向に拍車をかけ、「人民宰相」や「民族共同体」といったナチス的な用語を党綱領に再び採用している。「これらは右派の過激派の間で通じている隠語で、新しい支持者にも容認する人や無関心な人が増えている。そこには女性や専門職、大卒者、若者も含まれる」

ドイツのレーゲンスブルク大学のオーストリア歴史学者であるウルフ・ブルンバウアーも、自由党支持者は抗議票を投じたわけではないと考えている。

「今日、自由党はエスタブリッシュメントの政党だ。オーストリア国民は、自由党が人種差別主義的で権威主義的であり、キクルが憎悪に満ちた親ロシアで反移民であることを十分理解している。彼らに投票する人の大半はイデオロギー的な信念からだ。オーストリア社会の平均的な人をほぼ反映している」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏が訪英、NATO事務総長と長距離兵器

ワールド

ハリケーン、フロリダで猛威 竜巻で4人死亡 300

ワールド

中国首相「日中は供給網安定で協力を」、石破首相と会

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件増の25.8万件 ハ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはどれ?
  • 3
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 4
    ホームレスたちと河川敷で寿司パーティー、そして「…
  • 5
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパ…
  • 6
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 7
    大型ハリケーン「へリーン」が破壊した小さな町...20…
  • 8
    世界トップレベルの女子の理数能力を無駄にする、日…
  • 9
    ロシア戦車が次々炎上、ウクライナ軍の「ドラゴンド…
  • 10
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 1
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 2
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 3
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」の中国が世界から見捨てられる
  • 4
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「…
  • 5
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロ…
  • 6
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシ…
  • 7
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 8
    ウクライナ軍がミサイル基地にもなる黒海の石油施設…
  • 9
    NewJeansミンジが涙目 夢をかなえた彼女を待ってい…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 6
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 7
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 8
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 9
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 10
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中