オーストリア総選挙で「ナチス礼賛」の自由党が第1党、背景にコロナ禍で政府の規制より「個人の自由」を擁護
Europe’s Far Right Is Now Its Establishment
自由党は欧州極右の歴史の中でも特異な立場にある。2000年に国民党との連立政権に加わると、冷戦時代から続く保守と社会民主主義の二大政党制が崩壊。欧州で極右が普通の存在として受け入れられる契機となった。
当時、同党のカリスマ党首イェルク・ハイダーが首相に就任する可能性もあった。この前代未聞の事態を受け、EU諸国は同国に制裁を科した。民主主義を脅かす政党を容認すれば、各国で類似勢力が台頭すると懸念したのだ。
平均的な人が極右に投票
実際、その懸念は現実のものとなった。自由党が17年に再び政権に返り咲いたときには、もはやEUからの反発は起きなかった。
ただし、この国民党との連立政権は2年足らずで崩壊した。自由党党首のハインツクリスティアン・シュトラッヘ副首相がイビサ島(スペイン)の貸別荘の一室で、ロシア人女性に利益供与を約束する姿が隠し撮りされたためだ。
過激さを増した自由党が政権を担う可能性が欧州で容認されている現状は、新たな時代の兆候だ。大規模な抗議運動も制裁を求める声もない。
加えて、自由党の躍進は「無能な陰謀論者のポピュリストは、いざ政権に加われば、斬新な公約を政策に落とし込めずに信用を失う」という言説も打ち砕いた。シュトラッヘの醜聞でもつぶれなかった自由党は、今や無敵の存在だ。