真逆な2人が競う米大統領選終盤戦を占う
CONTRASTING CAMPAIGNS
トランプ陣営は今回、公開の大規模集会を過去の選挙戦より極端に減らしている。ワシントン・ポスト紙の分析によると、7月初めから8月10日までの間にトランプが開いた集会はわずか7回。16年の同時期には22回だった。
もちろん、そこには7月13日の暗殺未遂事件の影響がある。あの日、激戦州ペンシルベニアでの集会中にトランプは銃撃され、自らはかすり傷で済んだが、参加者1人が死亡している。「絶好のタイミングで首を動かすという幸運に恵まれなければ殺されていた。そう思えば、大規模集会を減らしたくなるのも当然だ」と、バティスタは言う。
正攻法で戦うハリス陣営
一方のハリスは頻繁に集会を開いている。本格的な選挙戦の始まったレイバーデーの祝日(9月2日)にペンシルベニア州ピッツバーグで開いた集会には、バイデン大統領も姿を見せた。
シカゴで民主党全国大会が始まっていた8月20日にはウィスコンシン州ミルウォーキーのアリーナで集会を開き、主催者発表で1万5000人を集めている。その勢いで彼女はシカゴに乗り込み、2日後、正式に大統領候補となった。
カリフォルニア大学バークレー校のテリー・バイムズ教授は、ハリスの集会に参加者が多いのはそれだけ同陣営が勢いづいている証拠だとし、トランプが集会を減らしているのは参加者が減ってきたからではないかと指摘する。
「集会参加者が以前ほど集まらなくなり、参加したとしても途中で退席してしまう。そういう状況が外部に伝わるのは都合が悪いだろう」
しかし、インタビューなら聴衆は関係ない。だから今のトランプは、集会よりも個別のインタビューを増やしているのではないかと、彼女は言う。
「逆の理由で、ハリスは個別のメディア対応よりも集会を選択している。彼女には勢いがあり、大勢の支持者が集まる。そうすれば黙っていてもメディアが報道してくれる」
公開の選挙集会をめぐっては、9月10日のテレビ討論会でも舌戦が繰り広げられた。まずはハリスが、トランプの集会参加者を話題にした。「彼の集会では、(『羊たちの沈黙』の)ハンニバル・レクターのような架空の人物の話を聞かされ、風力発電で癌になると聞かされる。それで疲れて、退屈した人はさっさと途中で帰ってしまう」
するとトランプは、ハリス陣営は参加者を水増しするために役者を雇っていると反撃した。「いいかね、そもそも彼女の集会には誰も行かない。行く理由がないからだ。集まっている人はみんな彼女がバスに乗せ、お金を払って参加させている。全ては演出、見せかけだ」