最新記事
米大統領戦

真逆な2人が競う米大統領選終盤戦を占う

CONTRASTING CAMPAIGNS

2024年10月3日(木)11時24分
ジェームズ・ビッカートン(本誌記者)

トランプ陣営は今回、公開の大規模集会を過去の選挙戦より極端に減らしている。ワシントン・ポスト紙の分析によると、7月初めから8月10日までの間にトランプが開いた集会はわずか7回。16年の同時期には22回だった。

もちろん、そこには7月13日の暗殺未遂事件の影響がある。あの日、激戦州ペンシルベニアでの集会中にトランプは銃撃され、自らはかすり傷で済んだが、参加者1人が死亡している。「絶好のタイミングで首を動かすという幸運に恵まれなければ殺されていた。そう思えば、大規模集会を減らしたくなるのも当然だ」と、バティスタは言う。


正攻法で戦うハリス陣営

一方のハリスは頻繁に集会を開いている。本格的な選挙戦の始まったレイバーデーの祝日(9月2日)にペンシルベニア州ピッツバーグで開いた集会には、バイデン大統領も姿を見せた。

シカゴで民主党全国大会が始まっていた8月20日にはウィスコンシン州ミルウォーキーのアリーナで集会を開き、主催者発表で1万5000人を集めている。その勢いで彼女はシカゴに乗り込み、2日後、正式に大統領候補となった。

カリフォルニア大学バークレー校のテリー・バイムズ教授は、ハリスの集会に参加者が多いのはそれだけ同陣営が勢いづいている証拠だとし、トランプが集会を減らしているのは参加者が減ってきたからではないかと指摘する。

「集会参加者が以前ほど集まらなくなり、参加したとしても途中で退席してしまう。そういう状況が外部に伝わるのは都合が悪いだろう」

しかし、インタビューなら聴衆は関係ない。だから今のトランプは、集会よりも個別のインタビューを増やしているのではないかと、彼女は言う。

「逆の理由で、ハリスは個別のメディア対応よりも集会を選択している。彼女には勢いがあり、大勢の支持者が集まる。そうすれば黙っていてもメディアが報道してくれる」

公開の選挙集会をめぐっては、9月10日のテレビ討論会でも舌戦が繰り広げられた。まずはハリスが、トランプの集会参加者を話題にした。「彼の集会では、(『羊たちの沈黙』の)ハンニバル・レクターのような架空の人物の話を聞かされ、風力発電で癌になると聞かされる。それで疲れて、退屈した人はさっさと途中で帰ってしまう」

するとトランプは、ハリス陣営は参加者を水増しするために役者を雇っていると反撃した。「いいかね、そもそも彼女の集会には誰も行かない。行く理由がないからだ。集まっている人はみんな彼女がバスに乗せ、お金を払って参加させている。全ては演出、見せかけだ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中