最新記事
野生動物

南洋のシャチが、強烈な一撃でイルカを「空中に弾き飛ばす」瞬間を撮影...残酷で完璧な狩りのスキル

Orca Matriarch Seen Throwing Dolphin Into Air During Hunt

2024年9月28日(土)19時26分
ジェス・トムソン
イルカを空中に跳ね上げるシャチの狩り

写真はイメージです Patricia VanOver/Shutterstock

<個体群によって餌にするものも狩りの方法も多種多様なシャチだが、一部は獲物を空中に弾き飛ばすほどの強烈な一撃で魚や海洋哺乳類をしとめるという>

南米のチリ沖で、獲物を捕まえようとするシャチの集団が、「冷酷」な方法で狩りをしている姿が観察された。海洋科学ジャーナル「フロンティアーズ・イン・マリーン・サイエンス」で発表された論文によると、この群れを率いるメスのシャチは狩りの最中にハラジロカマイルカ1頭を空中へと放り投げて仕留め、仲間がその肉を分け合って食べていたという。

■【写真】【動画】珍しくも「残酷」なシャチの狩り...イルカを「空中に弾き飛ばして」しとめるレアな捕食シーン

シャチの群れの捕食習性を詳細にとらえた観察情報は、チリ沖に生息するこの個体群と、南半球の他の個体群との関係解明、ならびに、保護活動の取り組み促進に役立つ可能性がある。

論文共著者で、チリのアントファガスタ大学の研究者アナ・ガルシア=セガラは声明で、以下のように述べている。「自然環境に生息するシャチの研究は実に困難だ。シャチは、海の生態系の頂点に立つ捕食動物であり、移動距離が長く、岸から離れた沖合に生息しているため、観察が難しい」

「しかし、海洋環境でシャチが果たす役割を解明することは、不明な点が多いフンボルト海流のシャチを保護するうえで不可欠だ」とガルシア=セガラは述べた。

獲物を尾びれで叩き、空中に弾き飛ばす狩りの方法も

シャチの狩り技術は高度かつ多様で、その方法は群れによってさまざまだ。これまでに、主に魚類などの獲物を尾びれで叩き、気絶させたりケガをさせたりするやり方が確認されている。その威力はすさまじく、獲物が空中に弾き飛ばされて、すぐさま気絶したり即死したりすることがあるほどだ。

波を起こして狩ることもある。集団で海氷に向かって突進し、手前で体をねじって水中に潜る。そうやって大きな波を起こして、海氷上にいたアザラシを押し流して海に落とすのだ。集団で狩りをする場合は、シロナガスクジラやコククジラといった大物を狙うこともある。連携プレーでは、幼い個体や弱い個体に狙いを定め、協力して獲物が疲れ果てるよう仕向けることも多い。

シャチは、世界的な絶滅危惧種として分類されているわけではない。しかし、特定の獲物に依存していたり、人間活動との接触、生息環境の悪化といった理由で、重大な脅威にさらされている個体群もいる。

個体群が異なると、食べるものも異なる。魚しか食べない群れも存在するし、アザラシや、ときにはクジラといった大きめの獲物を好む群れもある。南半球に生息するシャチの生態型は5つで、タイプAとタイプB1は海洋哺乳類を好む。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破自民新総裁、林官房長官続投の意向 財務相は加藤

ワールド

イスラエル軍、ヒズボラ指導者ナスララ師殺害と発表 

ワールド

イスラエル、ヒズボラ本部を空爆 指導者ナスララ師標

ワールド

ハリス氏、南部国境地域を訪問 不法移民の取り締まり
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:羽生結弦が能登に伝えたい思い
特集:羽生結弦が能登に伝えたい思い
2024年10月 1日号(9/24発売)

被災地支援を続ける羽生結弦が語った、3.11の記憶と震災を生きる意味

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ日本の伝統文化? カギは大手メディアが仕掛ける「伝検」
  • 2
    ワーテルローの戦い、発掘で見つかった大量の切断された手足と戦場の記憶
  • 3
    白米が玄米よりもヘルシーに
  • 4
    中国で牛乳受難、国家推奨にもかかわらず消費者はそ…
  • 5
    【クイズ】「バッハ(Bach)」はドイツ語でどういう…
  • 6
    中国が最大規模の景気刺激策を発表、これで泥沼から…
  • 7
    プーチンと並び立つ「悪」ネタニヤフは、「除け者国…
  • 8
    メーガン妃が編集したヴォーグ誌「15人の女性をフィ…
  • 9
    爆売れゲーム『黒神話:悟空』も、中国の出世カルチ…
  • 10
    野原で爆砕...ロシアの防空システム「Buk-M3」破壊の…
  • 1
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ日本の伝統文化? カギは大手メディアが仕掛ける「伝検」
  • 2
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感...世界が魅了された5つの瞬間
  • 3
    ワーテルローの戦い、発掘で見つかった大量の切断された手足と戦場の記憶
  • 4
    がん治療3本柱の一角「放射線治療」に大革命...がん…
  • 5
    白米が玄米よりもヘルシーに
  • 6
    メーガン妃に大打撃、「因縁の一件」とは?...キャサ…
  • 7
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 8
    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…
  • 9
    NewJeans所属事務所問題で揺れるHYBE、投資指標は韓…
  • 10
    先住民が遺した壁画に「当時の人類が見たはずがない…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 4
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 5
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 6
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 7
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 8
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
  • 9
    無数のハムスターが飛行機内で「大脱走」...ハムパニ…
  • 10
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中