最新記事
荒川河畔の「原住民」④

猫のために福祉施設や生活保護を拒否するホームレスもいる...荒川河畔の動物たち

2024年9月18日(水)17時05分
文・写真:趙海成
荒川河川敷の野良猫

荒川の川辺にいる可愛い野良猫たち

<荒川の河川敷に住むホームレスたちは、さまざまな動物と隣り合わせの生活を送っている。アライグマの姿をひと目見ようと野宿の準備をしていた在日中国人ジャーナリスト、趙海成氏は......。連載ルポ第4話>

※ルポ第3話:「この選択は人生の冒険」洪水リスクにさらされる荒川河川敷のホームレスたち より続く


東京は大雨が何度も降っていたが、今日はやっと晴れて、ジョギングを再開することができた。桂さんと斉藤さん(共に仮名)を訪ねに行くこともできる。川沿いを歩いているとシラサギが見えたが、近づくのを待たずに飛んでいってしまった。

残念に思っていた矢先、走っている1匹のカニを発見した。拾ってよく見ようとしたが、小さなカニはとても嫌がり、その大きなハサミで私の親指を挟んで、なかなか離れなかったので、本当に痛かった。

荒川の動物たち

早朝、荒川の小動物たちが新しい一日を始めた

その後、川を泳いでいるカモのつがいも見ることができた。雨が上がった後、動物たちは何日も姿を見せなかった太陽の出番を喜び、駆け出してきたようだった。

桂さんの話によると、荒川河畔一帯には多くの種類の動物がいるそうだ。アライグマ、ハクビシン、アオヘビ、カモ、キジ、タカのほか、シカ、サル、ウサギ、テンなどがいた時期もあったという。

何年か前には、河川敷の小さな森の一角で、アライグマとハクビシンの間で激しい領地争いが繰り広げられたこともあった。最終的にハクビシンの敗北で幕を閉じたそうだ。

私がその小さな森に入って行くと、桂さんと斉藤さんがベンチに座って、アイスコーヒーを飲みながら、とてもリラックスした様子で話していた。桂さんは私にも、鉄のコップに入ったアイスコーヒーを持ってきてくれた。飲むと本当に爽やかで良い気持ちになった。

荒川のホームレス

桂さん(右)も斉藤さん(左)も、起きたらまずコーヒーを飲む習慣がある

連日の大雨について尋ねたところ、最初の豪雨の時は確かに心配で、川の水位を気にしていたが、幸い、彼らの住まいが浸水するほどには水位は上がらなかったと、桂さんが言った。

斉藤さんは、昨日の朝早くにアライグマが餌を探しに来るのを見たという。残念ながら、彼の家には少しのうどんしか残っていなかった。彼の経験からすると、アライグマはうどんを好まず、醤油ラーメンを好むらしいのだ。

食べ物をもらえなかったアライグマは、立ち上がって不満げに、斉藤さんに向かって奇妙な鳴き声を上げ始めた。斉藤さんも真似をして、両手を肩の高さに上げて怒鳴ったところ、アライグマたちはおびえて逃げてしまった。

しかし、このままお腹を空かせたまま帰るのは悔しかったのか、アライグマたちは間もなく戻ってきた。今度は桂さんの家に行き、彼らの好物である白いパンを食べることができたそうだ。

荒川のホームレス

雨が上がった後、早朝の荒川河川敷

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中