最新記事
荒川河畔の「原住民」④

猫のために福祉施設や生活保護を拒否するホームレスもいる...荒川河畔の動物たち

2024年9月18日(水)17時05分
文・写真:趙海成

寿司パーティーを開いていたらアライグマ親子が現れた

私は2人としばらく話した後、夜6時半にまた会う約束をした。私たち3人は川辺の砂地で寿司パーティーを開くことにした。もちろん、焼酎を飲んで盛り上がることも欠かせない。

夕方5時頃に雨が少し降ったが、すぐに止んだ。8時半までに食事を終えて、私はちょうど酒を飲んでいた。その時、森の中にぼんやりと2つの小さな黒い影が、こちらに向かって動いているのが見えた。

「ああ! アライグマだ!」私は叫んだ。

私の叫び声を聞いてもアライグマたちは後戻りせず、むしろ私たちのほうに近づいてきた。桂さんは、前を歩いているのはお父さんアライグマで、後ろについているのは子供たちだと認識した。桂さんが彼らに向かって唐揚げを投げたので、私は急いでスマホを取り出して写真を撮った。

照明も何もなく暗かったし、アライグマが動いているので、撮った写真は少しぼやけている。

お父さんアライグマは私の前を2周ほど歩き回り、堂々としていて、まったく気にしない様子だった。

本当に予想外の出来事だった。私はアライグマを撮影するために、桂さんの「別荘」(編集部注:テント小屋のこと)のそばにテントを張って、10日から半月ほど野宿をしようと思っていた。そのためにテントや寝袋、照明器具などを購入していたのだ。

その瞬間がこんなに早く来るとは思わなかった。驚きのあまり、それほどうまく撮影することはできなかったが、近い将来、きっとかわいい彼らと再会して、もっと完璧な記録を残すことができると信じている。

荒川のアライグマ

やっとアライグマに会えた。彼らのおかげで、私たちの寿司パーティーは一層楽しい会になった

「天敵」アライグマと「特別な存在」である野良猫たち

小さい頃から小動物が好きだった私からすれば、アライグマはとてもかわいい。しかし、ホームレスの中には、アライグマやハクビシンは自分の生活を邪魔する「天敵」とみなす人もいる。

アライグマはなぜホームレスの反感を買ったのだろうか。それにはまず、彼らの生態について説明する必要があるだろう。

アライグマの原産地は北アメリカで、日本では「特定外来生物」と定められている。成長したアライグマは中型犬ほどの大きさだ。木登りや柱登りが得意で、普段は木の穴や寺の天井、倉庫などに生息することが多い。アライグマは雑食動物で、果実や野菜、人間の残飯などを食べる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中