最新記事
荒川河畔の「原住民」④

猫のために福祉施設や生活保護を拒否するホームレスもいる...荒川河畔の動物たち

2024年9月18日(水)17時05分
文・写真:趙海成

荒川河畔のホームレスはみな野外で生活しているので、冷蔵庫を使うことができない。テント小屋の中に食べ物を貯蔵する十分なスペースがなく、たいていは、袋に詰めてテントの外に置いている。これは、餌を探すアライグマにとって絶好の機会だ。彼らは簡単に空腹を満たすことができる。

かつて桂さんは、川で捕ったばかりの魚やエビをテントの中にしばらく置いていたところ、潜り込んできた2匹のアライグマにすべて食べられてしまったことがあった。

桂さんは気にせず、むしろ外に食べ物を置いてアライグマに食べさせたというが、すべてのホームレスが彼のように寛大であるわけではない。アライグマが盗み食いに来るのを防ぐために、追い払うための武器として、長い竹ざおを家の入口に置いているホームレスもいる。

野外にテントを張って生活するホームレスたちは、アライグマやハクビシンをあまり歓迎しないが、食べ物を探す野良猫に対しては特別に配慮し大切にしている。自分が空腹になるよりも、猫を空腹にさせるのが忍びないという人もいる。彼らは毎日欠かさず、猫に餌をやっている。

荒川沿いに住むホームレスには釣り好きな人が多い。彼らが魚を釣るのは自分のためだと思い込んでいたが、実はそうではないらしい。自分の所にいる猫たちのために釣りをしているというホームレスが多いのだ。釣った魚を、その場で切り分け、そばで待っていた猫たちに分けて食べさせる人もいる。

猫を愛するホームレスは、少ないと2、3匹、多い人では20~30匹を飼っている。彼らがどこかに引っ越して行ったら、猫もついて行くという。猫のためだけに、福祉施設に入ることや生活保護を受けることを拒否したホームレスまでいる。

彼らにとって、猫の命は自分たちの命より大切なものだ。もしかすると、彼らに最後まで寄り添うのは人間ではなく、野良猫たちかもしれない。


※ルポ第3話はこちら:「この選択は人生の冒険」洪水リスクにさらされる荒川河川敷のホームレスたち


(編集協力:中川弘子)


[筆者]
趙海成(チャオ・ハイチェン)
1982年に北京対外貿易学院(現在の対外経済貿易大学)日本語学科を卒業。1985年に来日し、日本大学芸術学部でテレビ理論を専攻。1988年には日本初の在日中国人向け中国語新聞「留学生新聞」の創刊に携わり、初代編集長を10年間務めた。現在はフリーのライター/カメラマンとして活躍している。著書に『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(CCCメディアハウス)、『私たちはこうしてゼロから挑戦した――在日中国人14人の成功物語』(アルファベータブックス)などがある。

ニューズウィーク日本版 高市vs中国
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月27号(1月20日発売)は「高市vs中国」特集。台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日中の民間交流は促進されるべき、渡航自粛要請の影響

ワールド

英など欧州諸国、はしか排除国認定を失う=WHO

ワールド

ウクライナ第2の都市ハリキウに攻撃、広範囲に停電 

ビジネス

午前の日経平均は反発、前日安の反動 為替介入警戒と
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 5
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 8
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    中国、軍高官2人を重大な規律違反などで調査...人民…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中