最新記事
台湾

台湾「第3の党」トップまさかの逮捕で広がる混乱...「クリーンで若者に人気」柯文哲に何があったのか?

Dramatic Corruption Claims

2024年9月9日(月)15時14分
ブライアン・ヒュー(ジャーナリスト)

ほかに身柄を拘束されたのは、柯の部下で副市長だった彭振聲(ポン・チェンション)と、仲介役として動いたとされる台北市議会の應曉薇(イン・シアオウエイ)議員(国民党)だ。應には、パートナーが犯罪組織とつながりがあるのではないかという疑惑もある。

柯は当初、検察の事情聴取に任意で応じたが、家宅捜索は与党・民進党による民衆党への政治的弾圧だと強く非難していた。柯の妻・陳佩琪(チェン・ペイチー)も事情聴取を受けている。


その後、柯は深夜の取り調べを拒否したため、正式に逮捕された。その後72時間、台湾の政治報道は大混乱に陥り、果たして柯が保釈されるかどうかが注目された。一方で民衆党は、柯の無実を確信しているとの声明を出した。

アメリカ渡航直前?

メディア・パーソナリティーの周玉蔲(チョウ・ユィコウ)は、柯が9月1日にアメリカに渡航するつもりだったと主張し、法の手を逃れる試みだと断じたが、民衆党は否定し、渡航計画などはなかったとしている。

一方で、民衆党の常任委員会は緊急作業部会を立ち上げた。同部会を率いているのは、党内の立法委員団トップを務める黄国昌(ホアン・クオチャン)とされる。

柯が拘束されていた台北地検の外には支持者が集結。9月1日に行われた抗議集会には約500人が参加したと報じられている。

そうしたなかで民衆党は、柯の逮捕は政治的な迫害だと訴え、検察の真の狙いは京華城跡地の再開発をめぐる疑惑ではなく、党の政治資金にあるとの見方を示してきた。

翌2日、柯は保釈金なしでいったん釈放された。台北地裁は、柯の直接関与や違法行為の認識があったと認定するには検察側の証拠が不十分だと判断した。

これを受けて、地検の前に集まっていた民衆党支持者は歓喜の叫びを上げたが、検察側の即時抗告で事態は一転。5日には地裁の再審理で、柯の勾留請求が認められている。

一方で検察は彭振聲の拘束を継続。裁判所も、彭が今回の一件でのキーパーソンの一人との見方を示している。

いずれにせよ、柯への疑惑が解消されたわけではない。台北市都市計画委員会の元委員で台湾建築学会会長を務める曽光宗(ツォン・コアンツォン)は、柯が京華城プロジェクトについて嘘をついていると非難している。

やはり都市計画委に所属する邵秀佩(シャオ・シウペイ)も検察の取り調べを受けており、海外渡航を制限された。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中