最新記事
台湾

台湾「第3の党」トップまさかの逮捕で広がる混乱...「クリーンで若者に人気」柯文哲に何があったのか?

Dramatic Corruption Claims

2024年9月9日(月)15時14分
ブライアン・ヒュー(ジャーナリスト)
台北の検察庁に移送される柯文哲

台北の検察庁に移送される柯文哲(8月31日) JAMESON WUーEYEPRESSーREUTERS

<総統選で民衆党を率いた柯文哲が収賄疑惑で逮捕されると、同党は「与党の謀略」と反発。500人規模の抗議集会も起こり、台湾は混乱に包まれている>

今年1月の台湾総統選に台湾民衆党を率いて出馬し、与党・民進党や最大野党・国民党には及ばなかったものの、第三勢力として旋風を巻き起こした柯文哲(コー・ウェンチョー)主席が8月31日に逮捕され、現地では大騒ぎになっている。なにしろ柯は若い世代の間で人気が高く、清廉なイメージで売っていたからだ。もちろん、党にとっても大きな痛手となる。

民衆党をめぐっては、政治資金がらみのスキャンダルもある。7月に発表した会計報告に、総統選関連の支出を記載していなかった。


会計報告の収入欄には個人からの寄付4660万台湾ドル、法人からの寄付3090万台湾ドルとあり、支出欄には人件費3700万台湾ドル、運営費2810万台湾ドルとあるのみで、選挙費用の記載がない。

これは極めて異例だ。民進党は6340万台湾ドル、国民党は2330万台湾ドルの選挙関連支出を計上している。

その後、民衆党は選挙運動の費用は運営費に含まれていると釈明したが、依然として約1900万台湾ドルの使途は不明なまま。なにぶんにも個人からの献金が多すぎて詳細の把握に時間を要していると、民衆党は苦しい弁明を繰り返してきた。

柯は8月29日に会計報告の不備を謝罪し、疑念を晴らすために今後3カ月間は党首の座を外れると発表した。

同時に、総統選で民衆党の選挙本部総幹事を務め、柯の信任厚い黄珊珊(ホアン・シャンシャン)議員に対する懲戒処分として党員資格を一時的に停止した。党所属議員としての地位は残るが、党内の役職は剝奪された。

その翌日の朝、柯の自宅が検察によって捜索された。容疑は、2019年にいったん閉鎖された台北市松山区のショッピングセンター京華城の跡地再開発プロジェクトに絡む収賄疑惑だった。

当時、台北市長だった柯は新築ビルの容積率(敷地面積に対する建物の床面積の割合)を392%から840%に変更することを不当に認めたとされる。この変更により、ショッピングモールを所有する威京総部集団は年間400億台湾ドルの追加利益を見込めることになった。

京華城案件に関与した人を次々逮捕

家宅捜索の数日前から、検察は京華城案件に関与したほかの人々を逮捕し、彼らの事務所を捜索するなど、明らかに柯に迫っていた。逮捕された者の中には、威京総部集団の会長である沈慶京(シェン・チンジン)も含まれていた。

沈は京華城の再開発に関連して、柯の時代にも前任者・郝龍斌(ハオ・ロンビン)の時代にも役人から賄賂を求められたと主張しているが、実際に賄賂を支払ったことはないとしている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中