ロサンゼルスのギャング抗争は、警察側も非道なプロファイリング、銃撃・投獄を行っていた
ストリートからネットへ...進化し続けるギャング犯罪
ギャング犯罪も進化を続けている。もともとはストリートで生まれたものであるのに、一部の活動は警察が目を光らせているインターネットを利用して、自宅などのプライベートな空間から行っているギャングが数多く存在する。
それでも、昔ながらの縄張り争いがなくなったわけではない。ソーシャルメディアでの対立や、ダークネット上の薬物販売をめぐる争いがあれば、たちまち街路での戦いが発生する可能性が高い。
それに対して、ロサンゼルス市警は20年前に地理情報システム(GIS)を導入し、犯罪活動を効率的に地図化し、警官が最も必要とされる場所を特定できるようになった。ストリート・ギャングの縄張りの境界を固定したものと見なすインジャンクションの地図とは違い、現在の地図を使えば、警察はリアルタイムに犯罪行為に対応できる。
たいていの場合、警察は危険が増大する前にギャングの行動を予測できる。だがそのためには、ギャングの流動的な生活様式の最新情報を常に把握していなければならない。
おそらく、仲間と縁を切って新しい生活を切り開こうとする人ほど、ギャングのメンバーを見分け、ギャング活動以外の人生を追求することの難しさを身にしみて感じているだろう。単にギャングから足抜けすればすむ問題ではないからだ。
静かに生きるつもりだったストリート・ギャングの元メンバーが、敵対するグループに所属していたというだけの理由で、襲撃され、殺害されるケースも少なくない。足を洗っても警察につきまとわれ、逮捕される元メンバーがあとを絶たない。犯罪歴という汚名によって、雇用機会を大幅に制限される可能性もある。
したがって、ストリート・ギャングの元メンバーの地域とのかかわりは、暴力で境界を定められ、抗争が繰り返される街で過ごした時間によって決められてしまう傾向がある。
チャンスさえあれば、メンバーの多くはギャングをやめ、二度と戻らないだろう。だがその代わりに、新しいメンバーが暴力で自分たちのグループの縄張りを維持するために組織化され、警察当局はその変化に追いつくことを強いられる。
これらの境界線は公式の地図には載らないはずだが、地元住民には市内のほかの境界よりも大きな影響力を持っている。境界を特定して視覚化できるかどうかが、生き死にを左右するとは言わないまでも、争いの絶えない場所で人間の行動に影響を与える可能性は大いにあるのだ。
『世界は「見えない境界線」でできている』
マキシム・サムソン 著
染田屋 茂、杉田 真 訳
かんき出版
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