最新記事
アメリカ

ロサンゼルスのギャング抗争は、警察側も非道なプロファイリング、銃撃・投獄を行っていた

2024年7月4日(木)18時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

1992年のブラッズとクリップスの合意など休戦協定が結ばれたときは、こうしたグループのあいだにある橋がいつか修復されるのではないかと一瞬希望を抱かせられた。だが、いったん足を洗いかけたギャングのメンバー、とりわけ若者が、そこにしかチャンスがないと思える場所に戻ってしまうことはめずらしくない。

ギャング犯罪には、やればやるほど強化される自己増強の傾向がある。そうなるのは、社会的・経済的階層の向上、地位、仲間のいる安心感を追求する住民が、ギャングに加わるしか手段がないと考えがちなだけでなく、暴力や破壊行為のリスクを恐れて企業が逃げ出すので、コミュニティが収入を得る機会は失われ、税収が減って地域を「浄化」する資金も枯渇し、放棄された土地が増えてギャングの占有できるスペースが増していくからだ。

ギャング犯罪は、メンバーのあいだで巨額の金が動くことはあっても、コストがかかるものなのだ。そのために、ギャングに悩まされている地域は人工的につくり出された無秩序から抜け出せなくなり、世間の注目を一身に集めることになる。

ジェントリフィケーション(訳注 都市内の低所得者居住地区に中産階層が入れ替わって移り住み、環境変化が起こること)によって、多くの人がダウンタウンやスラム街の周辺、さらには長年汚名を着せられてきたサウス・セントラル・ロサンゼルスの一部(2003年、ロサンゼルス市は地名から「セントラル」を外した。表面を取り繕っただけだが、驚くほど効果があった)を訪れたり、そこに住むようになったりしたが、ギャングの活動場所は依然としてそのままだ。

以前から危険で監視の行き届かない場所だった公園は確かに安全になったが、いまの様子を見ても、ロサンゼルスのストリート・ギャングによる凶悪犯罪が根絶されるとは思えない。スキッド・ロウというダウンタウンでは、ホームレスが始終ギャングの標的にされ、虐待されてきた。

その一方で、北部郊外の一部地域は、ギャングの犯罪が移転してきたおかげで大変な被害を受けている。現在、ロサンゼルス市警の概算によれば、市内だけで450以上のギャングと4万5000人以上のメンバーが存在するという。地域を広大なロサンゼルス大都市圏まで拡大すれば、その3倍から4倍以上と推定される。

また、ロサンゼルス市警と郡保安局のパトロールの管轄と活動方針の違いが、市の警察業務をさらに複雑にしている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中