最新記事
アメリカ

クリップスとブラッズ、白人至上主義、ヒスパニック系...日本人が知らないギャング犯罪史

2024年7月4日(木)18時20分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

そうしながら、保護は欲しいが、有名になって厳しい監視下にあるABの直接の配下とは見られたくないスキンヘッドの若者たちをスカウトした。まもなく、元被収容者と、この敵意ある集団に引き寄せられた人々の両方で構成されたNLRのストリート・ギャング版も登場した。

現在に至るまで、NLRは一般人に対する人種差別、同性愛嫌悪などの死亡事件を含むヘイトクライムに関与して悪評を高めている。

残念ながら、NLRがプリズン・ギャングに正式に分類され、20世紀から21世紀への変わり目にスティンソン(それにABのメンバーの何人か)を含むリーダーの有罪が確定しても、白人至上主義ギャングの活動を完全に阻止する効果は得られなかった。

NLRとABの残党は(かなり激論が交わされたらしいが)、地元の別の白人至上主義団体で、暴力性と攻撃性で知られたロサンゼルスのロング・ビーチのハードコア・パンク音楽界を起源に持つパブリック・エネミー・ナンバーワン(PENIまたはPEN1)に合流することを決めた。

1980年代の英国で活躍した無政府主義パンク・バンド<ルーディメンタリー・ペナイ>にちなんで名づけられ(もちろん非公認だ)、中産階級のメンバーが多いPENIは、なりすまし個人情報窃盗や詐欺などホワイトカラー系の犯罪に関与していることで知られるが、それ以外に、ほかのストリート・ギャングから白人の若者を「守る」という口実で暴力犯罪に手を染めている。

現在のPENIは、「スキンヘッド―ストリート―プリズン」という混合(ハイブリット)型ギャングになっており、状況に応じて人種差別主義の暴漢と傭兵と詐欺師の三役をこなすメンバーの能力のおかげで、刑務所内だけでなく、富裕層の住む郊外住宅地でも勢力を誇っている。


※第3回:ロサンゼルスのギャング抗争は、警察側も非道なプロファイリング、銃撃・投獄を行っていた に続く

『世界は「見えない境界線」でできている』
世界は「見えない境界線」でできている
 マキシム・サムソン 著
 染田屋 茂、杉田 真 訳
 かんき出版

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


20250204issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月4日号(1月28日発売)は「トランプ革命」特集。大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で、世界はこう変わる


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、利下げ慎重に 物価に上振れリスク=ボウマン

ビジネス

米PCE価格、12月は2.6%増に加速 個人消費も

ビジネス

米PCE価格、12月は2.6%増に加速 個人消費も

ビジネス

米国務長官、中米5カ国歴訪へ 移民問題など協議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望している理由
  • 4
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 5
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 6
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 7
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中