イランの核武装への兆候か? イスラエルとの初交戦と大統領墜落死が示すもの
IRAN EXAMINES THE NUCLEAR OPTION
「イラン政府当局者や要人による4月の核に関するサインは、かなりの部分までイスラエルへの牽制と、イランの核施設を標的にしたイスラエルの報復攻撃をアメリカにやめさせることが目的だったようだ」
一方「一般的に言って、転換を後押しする第2、第3の要因は」と、サベットは話を続けた。「制裁の解除につながるような核交渉の実現が見込めないこと。それにアメリカの現政権か次期政権が、イランに対する軍事的または経済的締め付けを強化するのではないかという懸念だ」
「安全が保障されれば核は不要」
イランは発効当初の70年からNPTに加盟してきたが、制裁解除を期待できなければ、脱退を検討する可能性もあると指摘する専門家もいる。
「イラン政府はNPTに残留し、核兵器開発を自粛しているのに、制裁を強化されるという流れを容認できないだろう」と、本誌に語るのは、00年代半ばに欧米との核交渉に当たったイランの元外交官で、現在はプリンストン大学の「科学および国際安全保障」プログラムの中東安全保障・核政策専門家を務めるホセイン・ムサビアンだ。
「問題は核だけではない」と、ムサビアンは言う。イランはNPTに加え、化学・生物兵器など大量破壊兵器や民間人を無差別に殺傷する兵器の開発を禁止する条約を締結している。にもかかわらず、外交的、経済的、軍事的に猛烈な圧力をかけ続けられているというのだ。
「過去何十年も世界の列強がイランに誓約を守らせようと、イランからさまざまな権利を奪ってきた」と、ムサビアンは言う。「そんなことがいつまでも続くはずがない」
イラン国内にも核政策転換の兆しに注目している人たちはいる。
テヘラン在住の安全保障アナリスト、アリレザ・タガビニアによると、核政策を変えられるのは、権威あるイスラム法学者でもあるハメネイただ一人だ。けれども国家の存続が脅かされたとなれば、信仰を根拠に政策転換を論じることが可能になると、タガビニアは本誌に語った。「イスラムでは人々の生存と生活を守ることが何より重要とされる」ので、「国民の命と国家の存続が危うくなれば、話は違ってくる」というのだ。
「アメリカは気付くべきだ」と、彼は主張する。「軍事攻撃の脅しと制裁ではイランの核開発を止められないことを。そして、イランを敵視する政策は捨てるべきだということを。そうなれば、イランは核武装をする必要がなくなり、NPTの枠内で核利用を進めるだろう」