イランの核武装への兆候か? イスラエルとの初交戦と大統領墜落死が示すもの
IRAN EXAMINES THE NUCLEAR OPTION
4月の「報復合戦」が契機に
それでも国連安全保障理事会は2006年、イランの核開発をめぐる初の規制決議案を採択した。アメリカはその10年前、既にイランに対する核関連の制裁を発動していた。
対イラン制裁は15年、バラク・オバマ元大統領の下で成立した画期的な多国間核合意である包括的共同作業計画(いわゆる「イラン核合意」)によって一時的に撤廃された。それと引き換えにイランは核開発の制限に同意したが、18年にドナルド・トランプ前大統領の下でアメリカは合意から離脱。その結果、制裁が復活すると、イランは核開発のスピードを徐々に上げ始めた。
ジョー・バイデン現大統領は就任後間もなく、核合意への復帰を目指して一連の交渉を開始したが、交渉は22年末までに決裂。アメリカとイランの相互不信はガザ戦争で深まる一方だ。5月上旬イランを訪問した国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は、イランはその気になれば数週間で核兵器を製造できると警告した。
グロッシも複数のイラン要人発言に懸念を表明した1人だ。IAEAのある報道官は本誌に言った。「核兵器に関する『粗雑な発言』には深い懸念を抱いていると、グロッシ事務局長は繰り返し明確にしてきた。イランが非核保有国の核兵器開発を禁じる核拡散防止条約(NPT)の加盟国であることも強調してきた」
この報道官は一方で、「イランが核兵器開発に動いたか、動きつつあるか、動くことを計画している証拠はない」というグロッシの最近のコメントにも言及した。
イラン国連代表部にコメントを求めたところ、核兵器に反対するハメネイの最初の指令を守ると再度強調したが、IAEAとの協力を再考させるような敵対的行動に警告を発するのも忘れなかった。
「周知のように、イランの核政策に変更はない。いかなる形の大量破壊兵器の製造、調達、備蓄、使用も明確に禁止する最高指導者のファトワを遵守し続ける」と、イラン代表部は本誌に語った。「だがIAEAの監視と査察の対象であるイランの核施設が攻撃された場合には、IAEAとの包括的保障措置協定に基づく協力を再考する可能性がある」
イラン国内の核に関する議論の転換を後押しする3つの要因のうち、「最も重要なもの」は敵対国の動向に対する懸念だと、サベットは本誌に語った。具体的には4月に起きた危険な武力の応酬(イスラエルがシリアのイラン大使館領事部を攻撃し、その報復でイランがイスラエルに大量のミサイルとドローン〔無人機〕を発射。イスラエルがイランの防空施設を再報復攻撃)だという。