ウクライナ戦場で勲章を受けた日本人「BIGBOSS」...48時間の「脱出劇」
JAPANESE IN UKRAINE
エリート部隊に所属するBIGBOSSさんはロシア軍に囲まれたなか、気力と体力、判断力をフル稼働し48時間かけて脱出した COURTESY OF BIGBOSS
<義勇兵、ボランティア、長期在住者......銃弾が飛び交う異国に日本人が滞在し続ける理由。現地レポート第3弾>
元水陸機動団員の脱出劇
BIGBOSS(以下B)さんは関西地方出身で20代前半。23年6月にウクライナに入り、ウクライナ陸軍の「チューズン・カンパニー(選ばれし者の中隊)」に入隊。ドンバス地方の前線で戦闘に参加し、23年末に敵拠点を制圧する任務で重傷を負った。その功績が評価され、24年3月にウクライナ軍から勲章を授与された。
Bさんは、陸上自衛隊のエリート部隊である水陸機動団に約4年間所属した。自衛隊内で着実にキャリアを積み、将来有望な存在と周囲からも期待されていた。それがロシアの侵攻が始まると、周囲の反対を押し切って自衛隊を辞めウクライナで戦うことを決断した。
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「ウクライナで戦うと決めてから、準備に1年近くかけました」と、Bさんは言う。「『不安がある=死ぬ』ことだと思っているので、その不安がなくなるまで鍛え続けました」
ポーランドを経てウクライナに入国し、ウクライナ外国人部隊で最強とされるチューズン・カンパニーに参加してドンバス地方の前線へ。突撃、陣地奪取、特殊偵察など高度なスキルを要する任務が主の部隊だ。
兵士として完璧な準備をしたBさんが配置されたのは、敵の拠点まで100メートル以内、スコープで見ると赤いテープを腕に巻いたロシア兵が動いているのが見える最前線だった。そして、夜間に市街地の敵拠点を制圧するチームに選抜される。
曳光(えいこう)弾が狙ってくるなか、先頭で敵拠点の入り口まで行き、手製の手榴弾を中に投げ込むと大きな爆発が起きた。その衝撃で入り口に大きな穴が開き、Bさんはその穴から敵の拠点の地下部分に落ちてしまう。煙が立ち込めるなか、銃を撃ちながら中へ進むと敵が応戦してきて防弾ベストに4発、左足に3発の銃弾を受けた。とっさに中にあったコンクリートの壁に身を隠した。
暗闇の中、敵までの距離は約5メートル。相手の声が聞こえる状況でさらに撃ち合いが始まり、手榴弾7、8個を敵側に投げ込んでもまだ敵の声がする。その後も撃ち合いは続いたが、こちらは弾切れになり、敵もリロード(銃弾の装塡)を繰り返している音が聞こえてきた。お互い弾切れになったと気付いた直後に、敵のドローンが自分の落ちた穴から手榴弾を4発ほど落としてきた。
わずか2メートルのところで手榴弾が爆発して、無数の鉄の破片が体中に刺さった。戦闘中の興奮のためか、不思議と痛みは感じない。追い込まれ、自分が持っている限りの手榴弾を拠点内にいる敵に投げた。すると奥にあったガスボンベに引火して大爆発が起き、やっと敵の攻撃がやんだ。