肥満や足が遅い人のための登山隊も出現、エベレスト登山がここまで普通になった訳
Mount Everest Tours Offer Expeditions for Plus-Sized Climbers as Crowds Gro
「ベースキャンプに到達することは、それ自体が独立したトレッキングだ」という認識が、ソーシャルメディアを通じて広がっている、とマッケイは言う。「エベレストに登頂する必要はない。エベレストを見ることができるだけで、この上なくスリリングな体験だ」
冒険を求める人々がヒマラヤに大挙して押し寄せるなか、ネパールの最高裁判所は、過密状態を緩和するために配布される登山許可の数を制限するよう政府に求めている。登山許可証の取得費用も来年から1万1000ドルから1万5000ドルになる見込みだ。
ニュージーランドの山岳ガイド会社アドベンチャーズ・コンサルタンツのゼネラル・マネージャー、キャロライン・オグルは、注目度の高いドキュメンタリー映画が作られていることも、エベレストが脚光を浴びる原因となっている、と語った。
ウォーターズは、2023年もエベレスト登頂許可者数が記録的に増えた年だったと指摘。彼自身はこの春は登らなかったが、「過去10年間、ほぼ毎年」登っており、エベレスト初登頂から21年目となる来年の春も再登頂をめざす予定だという。
チベットルート再開の影響
「エベレストの登山者は年々増えている」と、アルパイン・アセンツ社でプログラム・ディレクターを務めるゴードン・ジャノーは言う。「知名度がさらにあがっている。エベレストに魅力を感じる人々は常に存在する」
ジャノーは、趣味でランニングを始めた人が、やがて5キロのレースに出たいと思うようになり、やがてはマラソン大会に出たいと思うようになる例をあげた。
「それはごく自然な成り行きだ」と、ジャノーは言う。彼が経営するアルパイン・アセンツ社は、90年代にいち早くエベレスト登山ツアーを企画した会社のひとつだ。
それ以来、地元ネパールの会社がエベレスト登頂のガイドをするようになり、登山を希望する人々の選択肢が増えた、とジャノーは言う。その前は、ヨーロッパ、アメリカ、ニュージーランドを拠点とする会社を通して登山するのが一般的だった。
混雑に拍車をかけているのは、チベット側からの登山の再開だ。新型コロナウイルスのパンデミック発生で4年間登山を禁止していた中国は今年、外国人にチベット経由での登山を許可した。
「インド亜大陸や中国など、世界各地から多くの人々がやってくるようになった。彼らが登山の訓練を受けているとは限らない」と、ジャノーは言う。「ただ登山の世界に飛び込み、手あたり次第登ることができる山に登って、多少のスキルを身に着けた程度の人々だ」
そのため、登山経験の浅い登山客を受け入れるツアー会社が増え、登頂のスピードが遅くなっている、とジャノーは言う。