最新記事
オーバーツーリズム

肥満や足が遅い人のための登山隊も出現、エベレスト登山がここまで普通になった訳

Mount Everest Tours Offer Expeditions for Plus-Sized Climbers as Crowds Gro

2024年6月3日(月)17時39分
モニカ・セイガー

マッケイは登山に先立ち、バージニア州のアパラチア山脈でハイキングし、5キロマラソンを走り、足踏み運動用のステッパーで鍛えるなど、「できる限りのトレーニング」を試みた。

「それが私の日課の大半だった」と、彼女は言う。「正直なところ、エレベスト登山のコースは予想とは違っていた。たいへんだったけれど、なんとかなった」。

おそらく最も重要なのは、リアルタイムの山の気象トラッキングシステムの登場だ。おかげで、登山者は、山を登り続けるのに適した天候がいつになるかをほぼ正確に予測できるようになった。

 

「以前は、山に登ってから好天を祈るしかなかった」と、彼は言う。「今は衛星が2、3時間先まで天気を教えてくれる。それで事態が一変した」

山頂に向かう登山者の渋滞が発生するのは、好天を予測できるシステムのせいだ。ソーシャルメディア上では「ラッシュアワー」状態の登山者たちを映した数々の画像や動画が注目を集めている。

「エベレストの頂上をめざして押し寄せた登山者が大行列を作る画像があるが、あんなことになるのは、複数の大規模な登山隊が同じ日に登頂することを選択するからだ」と、アドベンチャー・コンサルタンツのオグルは本誌に語った。

近年、エベレストに関しては、山頂まで続く登山者の長い行列や、ゴミだらけのベースキャンプを映した動画や画像がソーシャルメディア上に出回っている。しかしマッケイによれば、そうした動画は、エベレストに登るということが(たとえ頂上に到達しなくても)どういうことなのか、その全貌を伝えていないと言う。

ネパール観光局によれば、今年すでに600人以上の登山者が標高8849メートルの山頂に到達している。

アメリカ人有名登山家アラン・アーネットによれば、ネパール側から登山する外国人登山家を支援するシェルパ(山岳ガイド)は900人に上る。最近再開されたチベット側登山口には、さらに100人の外国人登山者と100人のガイドがいた。

登頂の成功率が急上昇

調査会社スタティスタのデータによると、エベレスト登頂成功者の数は急増しており、過去10年間で毎年平均414人が登頂に成功している。標高約5364メートルのベースキャンプなら、年間約4万人が到達している。

newsweekjp_20240603093443.png

成功率の急上昇にはいくつかの要因があるが、そのうちのひとつはごく単純だ。70年以上前ニュージーランドの登山家エドモンド・ヒラリーが初めてエベレストを制覇したときと比べて、昨今は登頂に必要な肉体的条件がいくらか軽減されている。登山靴や登山服、その他の道具も改良を重ねて負担を軽減するように作られている。

「エベレストはどのシーズンだろうと、人気があると思う。エベレスト登山のロジスティクスの合理化が進むにつれて、すべてがより効率的になった。率直に言って、登頂は10年前よりも挑戦しやすくなっている」と登山専門会社マウンテン・プロフェッショナルズのオーナー、ライアン・ウォーターズは本誌に語った。

それでも、エベレスト登山には危険が伴う。今シーズンは登山者8人が死亡し、3人が行方不明になっている。

一方、ネパール人登山家のプンジョ・ラマは14時間31分で登頂し、女性最速の記録を達成した。また、シェルパ族の山岳ガイド、カミ・リタは30回目の登頂に成功し、自身がもつ最多登頂記録を更新した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中