最新記事
オーバーツーリズム

肥満や足が遅い人のための登山隊も出現、エベレスト登山がここまで普通になった訳

Mount Everest Tours Offer Expeditions for Plus-Sized Climbers as Crowds Gro

2024年6月3日(月)17時39分
モニカ・セイガー

「ベースキャンプに到達することは、それ自体が独立したトレッキングだ」という認識が、ソーシャルメディアを通じて広がっている、とマッケイは言う。「エベレストに登頂する必要はない。エベレストを見ることができるだけで、この上なくスリリングな体験だ」

冒険を求める人々がヒマラヤに大挙して押し寄せるなか、ネパールの最高裁判所は、過密状態を緩和するために配布される登山許可の数を制限するよう政府に求めている。登山許可証の取得費用も来年から1万1000ドルから1万5000ドルになる見込みだ。

ニュージーランドの山岳ガイド会社アドベンチャーズ・コンサルタンツのゼネラル・マネージャー、キャロライン・オグルは、注目度の高いドキュメンタリー映画が作られていることも、エベレストが脚光を浴びる原因となっている、と語った。

ウォーターズは、2023年もエベレスト登頂許可者数が記録的に増えた年だったと指摘。彼自身はこの春は登らなかったが、「過去10年間、ほぼ毎年」登っており、エベレスト初登頂から21年目となる来年の春も再登頂をめざす予定だという。

チベットルート再開の影響

「エベレストの登山者は年々増えている」と、アルパイン・アセンツ社でプログラム・ディレクターを務めるゴードン・ジャノーは言う。「知名度がさらにあがっている。エベレストに魅力を感じる人々は常に存在する」

ジャノーは、趣味でランニングを始めた人が、やがて5キロのレースに出たいと思うようになり、やがてはマラソン大会に出たいと思うようになる例をあげた。

「それはごく自然な成り行きだ」と、ジャノーは言う。彼が経営するアルパイン・アセンツ社は、90年代にいち早くエベレスト登山ツアーを企画した会社のひとつだ。

それ以来、地元ネパールの会社がエベレスト登頂のガイドをするようになり、登山を希望する人々の選択肢が増えた、とジャノーは言う。その前は、ヨーロッパ、アメリカ、ニュージーランドを拠点とする会社を通して登山するのが一般的だった。

混雑に拍車をかけているのは、チベット側からの登山の再開だ。新型コロナウイルスのパンデミック発生で4年間登山を禁止していた中国は今年、外国人にチベット経由での登山を許可した。

「インド亜大陸や中国など、世界各地から多くの人々がやってくるようになった。彼らが登山の訓練を受けているとは限らない」と、ジャノーは言う。「ただ登山の世界に飛び込み、手あたり次第登ることができる山に登って、多少のスキルを身に着けた程度の人々だ」

そのため、登山経験の浅い登山客を受け入れるツアー会社が増え、登頂のスピードが遅くなっている、とジャノーは言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英インフレ上振れ懸念、利下げ段階的に=ロンバルデリ

ワールド

ルーマニア大統領選、12月に決選投票 反NATO派

ビジネス

伊ウニクレディト、同業BPMに買収提案 「コメルツ

ワールド

比大統領「犯罪計画見過ごせず」、当局が脅迫で副大統
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中