最新記事
トランプ裁判

まるで「法廷ドラマ」...前大統領トランプを「重罪犯」とした裁判の全貌

Trump Now a Convicted Felon

2024年6月3日(月)17時04分
ジェレミー・スタール(スレート誌シニアエディター)

トランプの別荘「マールアラーゴ」前に集まった支持者

有罪評決後にフロリダ州のトランプの別荘「マールアラーゴ」前に集まった支持者 MARCO BELLOーREUTERS

トランプは法廷から出るときに、その場にいた息子のエリックの体をつかむようなしぐさをした。法廷内は緊迫感に包まれていたが、不気味なほど静まり返っていた。パソコンの使用は許可されていたが、Wi-Fiがダウンしたため、傍聴席の記者たちはいち早くニュースを伝えようと躍起になっていた。

有罪を勝ち取ったブラッグはキャリアの絶頂ともいうべきこの瞬間にも表情一つ変えず前を見つめていた。

「この裁判で評決を出せたことはアメリカの司法制度の面目躍如たるものがある」と、傍聴席にいた著名な元判事のビンセント・グラッソは本誌に語った。「全ての証拠を検討した上で、これは実にまっとうな評決だと言える」

トランプは予想を裏切らず憤慨し、評決後に記者団に次のように語った。「恥ずべきことだ。腐敗して矛盾した判事による不正な裁判だ。不正な裁判だ。不名誉だ。彼らは裁判地の変更を認めなかった。この地区のこのエリアで、私たち(の支持率)は5%か6%だった。真の評決は11月5日(大統領選の投票日)にアメリカ国民が下すだろう」

結局のところ、検察が語ったストーリーは首尾一貫していて説得力があった。2016年の大統領選の直前、トランプは当選に向けた違法な策略として、コーエンを通じて不倫相手の元ポルノ女優ストーミー・ダニエルズに口止め料を渡し、業務記録を改ざんして支払いを隠蔽した。

検察は、17年にトランプからコーエンに支払われた42万ドルは立て替えた口止め料を弁済するスキームの一環であり、帳簿上の「弁護士費用」ではないことを示す膨大な「証拠の山」を提示した。

トランプの弁護団はこれらの証拠について説得力のある説明に苦労し、弁護士費用であることを示す書類も提示しなかった。

最終弁論でジョシュア・スタイングラス地方検事補は次のように述べた。「この者たちがつくり上げたこのスキームは、トランプの大統領当選を後押しした可能性が高い。有権者を欺くためのこの行為が、実際に選挙に影響を与えたかどうかを知るすべはないが、私たちがそれを証明する必要はない」

「トランプの陰謀」が成功

とはいえ、16年のトランプ勝利の衝撃、20年の大統領選への攻撃、そして24年のカムバックが演出している無敵のオーラを考えてみれば、16年10月にダニエルズのスキャンダルが発覚していたら何かが変わったはずだという見方には疑問を感じる。

しかし、検察が示した時系列を改めて見ると、16年の選挙をめぐるトランプの犯罪的な共謀のインパクトは、現在の私たちが感じるよりはるかに大きかっただろう。裁判ではさらに、共和党の予備選でもトランプ陣営の陰謀が成功した経緯が語られた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中