最新記事
トランプ裁判

まるで「法廷ドラマ」...前大統領トランプを「重罪犯」とした裁判の全貌

Trump Now a Convicted Felon

2024年6月3日(月)17時04分
ジェレミー・スタール(スレート誌シニアエディター)
ドナルド・トランプ

有罪評決後もトランプは不正な裁判だと不服顔だった(ニューヨーク、5月30日) SETH WENIGーPOOLーREUTERS

<元ポルノ女優が証言台に立ち不倫口止め料の詳細を語ったトランプ裁判。12時間弱に及ぶ評議の末、アメリカ史上初めて大統領経験者への「有罪」判決が言い渡された>

5月30日午後4時37分。法廷内にひそやかなざわめきが広がった。ここはマンハッタンにあるニューヨーク州地区裁判所。ドナルド・トランプ前大統領の不倫相手への口止め料支払い疑惑をめぐる裁判は大詰めを迎えていた。

陪審員の意見が割れて評議が翌日に持ち越されるかと思われた矢先、空気が変わった。フアン・メルチャン判事が、陪審員団が評決に達したと伝えたのだ。

陪審員団は12時間弱に及ぶ評議の末、第1級の業務記録改ざんで34件の罪に問われたトランプに有罪の評決を下した。1件につき最高4年の懲役刑が科される罪だが、刑期が加算され何十年にも上ることはなさそうだ。

大統領経験者には刑務所でもシークレットサービスを付けなければならないため、コスト面からも実刑となる見込みは薄い。

現時点で、トランプは有罪が確定した「重罪犯」だが、控訴すれば裁判が長引き、その間は収監される心配はまずない。

評決が読み上げられる前、トランプは腕組みして座り、前方をにらんでいた。弁護士のトッド・ブランチとエミル・ボーベが彼に何か耳打ちした。

息子のエリック・トランプはちょっとだけ席を外し、急いで戻ってきた(評決が言い渡される前にトイレに行く時間はあるかと記者の1人が職員に聞き、「ありません。本当にいま行きたいんですか」との答えに周囲が笑いを漏らす一幕もあった)。

アルビン・ブラッグ検事も評決を聞くために席に着き、隣席の検事と二、三言葉を交わして、あごに手を当て運命の時を待った。アメリカ史上初めて大統領経験者が刑事責任を問われた裁判で、彼が率いる検察チームは果たして有罪を勝ち取れるのか......。

陪審員たちは裁判の間ずっとそうしてきたように、トランプとは目を合わさずに法廷に入り席に着いた。

34件の罪状の1つ1つについて、陪審長が有罪を告げる間、法廷内の全員が着席し黙って聞いていた。罪に問われたのは小切手11件、請求書11件、元帳12件の改ざんだ。

評決が言い渡された後、トランプは目を閉じているように見えたが、ブランチ弁護士は両手で顔を覆っていた。

「真の評決は投票日に」

ブランチは検察側証人のマイケル・コーエンが虚偽の証言をしたと主張。その証言に依拠した陪審員団の評決を覆すよう求めたが、判事はすぐにこれを却下した。

陪審員全員が評決に異論はないと認めた後、メルチャンは6週間にわたる裁判での彼らの労をねぎらった。そして量刑は7月11日午前10時に言い渡すと宣言した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相、あす午前11時に会見 予算の年度内成立「

ワールド

年度内に予算成立、折衷案で暫定案回避 石破首相「熟

ビジネス

ファーウェイ、24年純利益は28%減 売上高は5年

ビジネス

フジHD、中居氏巡る第三者委が報告書 「業務の延長
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中