最新記事
インド経済

それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意欲が乏しい3つの原因

IS INDIA REALLY THE NEXT CHINA?

2024年5月14日(火)15時30分
ジョシュ・フェルマン(元IMFインド事務所長)、アルビンド・スブラマニアン(元インド政府経済顧問)

第2に、輸出を増やす必要性を十分に認識しているはずの中央政府にも内向きの体質が残り、保護主義に走って輸入障壁を築きがちだ。しかも今は国民の多くが、インドには巨大な市場と優秀な国内企業があるから(政府の支援さえあれば)外国企業に頼る必要はないと信じている。無理もない。政治がナショナリズムに傾けば、経済も同じ方向になびくのは当然だろう。

だが現実は厳しい。外資系企業がインドに売り込みたいのは中産階級向けの消費財だが、そうした分野の市場は決して大きくない。一方で保護主義的な政策が次々に打ち出されるようだと、いつサプライチェーンが寸断されるか分からず国内企業の投資意欲はそがれる。例えば、昨年8月に発表されたノートパソコンの輸入規制はIT分野の国内企業をパニックに陥れた。結果的に規制は緩和されたが、同様な規制は他の分野でも導入されているから、どの企業も安心できない。

そして最後に、政治の行方に関する疑問がある。たとえ経済環境に多少の問題があっても、政治が安定していれば投資は増え、経済成長も持続できよう。今のインドでは総選挙の投票が続いているが、取りあえずモディ政権は安泰に見える。だが国内の南北格差は深刻で、少数民族や非ヒンドゥー教徒の不満は高まっているから何が起きるか分からない。

かつて偉大な経済学者ケインズが言ったように、世に「不可避」なことなど存在しないが、「想定外」の事態はいつどこでも起こり得る。

そう、今のインドには確かに希望が垣間見える。しかしその未来には不安がいっぱいだ。

Foreign Policy logo From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 独占取材カンボジア国際詐欺
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月29日号(4月22日発売)は「独占取材 カンボジア国際詐欺」特集。タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英消費者信頼感指数、4月は23年11月以来の低水準

ビジネス

3月ショッピングセンター売上高は前年比2.8%増=

ワールド

ブラジル中銀理事ら、5月の利上げ幅「未定」発言相次

ビジネス

米国向けiPhone生産、来年にも中国からインドへ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 6
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 7
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 8
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    欧州をなじった口でインドを絶賛...バンスの頭には中…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中