「ラファ侵攻」を巡りアメリカとイスラエルの対立が激化、ネタニヤフが同盟国より優先するものとは?
Politics Over Peace
バイデンはイスラエルのガザ攻撃に「度を越している」と苦言を呈し、ロイド・オースティン米国防長官はイスラエルの国防相にラファ侵攻への懸念を表明。
イスラエル寄りで知られる米上院民主党のチャールズ・シューマー院内総務は連立政権内の極右のせいでイスラエルは国際社会の「嫌われ者」になりかねないと警告し、今すぐ総選挙を実施すべきだとまで主張した。
こうした状況下で、ネタニヤフは再調整に応じたとはいえ、一旦は代表団の訪米中止を宣言した。これまた「度を越した」対応である。
その数日前にアントニー・ブリンケン米国務長官との会談で、ネタニヤフはラファへの地上侵攻はアメリカの支援を得て実行したいが、「必要とあらば、単独でも実行する」と豪語。
だが代表団の訪米中止宣言は「アメリカなんかクソ食らえ。自力でやる」とたんかを切ったに等しい。
ネタニヤフはまた、ハマスが最新の停戦案を拒否したのは、アメリカが安保理決議案の採択で棄権したせいだとまで言い募った。ハマスはアメリカがイスラエルを見捨てたとみて付け上がり、一切譲歩しなくなった、というのだ。
これにはバイデンもたまりかね、国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調査官に記者会見で反論させた。ハマスはアメリカが安保理の採択で棄権する前に停戦案拒否を決めた、と。
「マサダの戦い」という教訓
カービーは言わなかったが、ネタニヤフの発言は明らかに常軌を逸している。ハマスが停戦案を突っぱねたことで、停戦成立を阻んでいるのはイスラエルではなくハマスだと主張できるのに、みすみすそのチャンスをつぶし、自分と自国の最も強力な盟友であるバイデンにかみついたからだ。
こうした態度に出るには訳がある。ネタニヤフは停戦に乗り気だと見られたくないのだ。国際社会の抗議を無視し、アメリカの忠告を聞かず、ラファ侵攻を断行する姿勢を見せつけたがっている。
誰に? 自分よりもはるかに強硬な極右の連立パートナーに、だ。
公の場でハマスに譲歩する姿勢をちらっとでも見せるか、机上の空論であれパレスチナ国家の樹立に言及しようものなら、必ずや連立パートナーの反感を買う。彼らが抜ければ政権は崩壊し、総選挙の実施を迫られる。
世論調査の結果が示すように、そうなればほぼ確実にネタニヤフの政治生命は一巻の終わりとなる。