「ラファ侵攻」を巡りアメリカとイスラエルの対立が激化、ネタニヤフが同盟国より優先するものとは?
Politics Over Peace
イスラエルが払う代償
イスラエルの有力紙ハーレツのコラムニスト、アロン・ピンカスは25日に、イスラエルはアメリカと「衝突する道を進んでいる」と指摘。建設的な外交を試みるバイデンに対し、ネタニヤフが軽蔑するような態度を繰り返していることを挙げた。
アメリカの要請を無視し、大統領の忠告を軽んじ、国務長官を翻弄し、提案を嘲笑し、戦後のガザについて信頼できる一貫したビジョンを示すことをかたくなに拒み、米政権と公然と対立する──その代償を支払うことになるだろうと、ピンカスは書いている。
今回の国連決議は、イスラエルをひどく侮蔑するものではない。「ラマダン(断食月)期間中の即時停戦と、全ての当事者がこれを尊重して持続可能な停戦への道を開くこと」「人質全員の即時かつ無条件の解放」「人道支援の提供のあらゆる障害を取り除くこと」を要求している。
これに対してアメリカは、紛争を引き起こした昨年10月7日のハマスの暴挙に決議案が言及していないとして棄権。全15理事国のうち残り14カ国が賛成して採択された。
もっとも、決議案には反対するような文言はなかったと、関係者は説明する。草案は「恒久的停戦」を求めていたが、米国連代表部はラマダン期間中のみという文言に変更させ、「持続的な停戦」につながることを期待するとした。
ただし、3月上旬に始まったラマダンは残り2週間足らずで、アメリカ、イスラエル、エジプト、カタールの外交官が個別の交渉で提案した6週間の停戦ほど長くはない。
それでもネタニヤフは、人質解放を条件とする停戦ではないと主張するが、これは詭弁だろう。決議案に従えば、「即時停戦」と「全ての人質の即時かつ無条件の解放」が同時に行われると考えられる。
いずれにせよ、少なくともラマダン明けまでに停戦は実現しそうにない。安保理決議には拘束力があるとはいえ、国連には執行機関がない。イスラエルもハマスも「要求」を無視する可能性が高い。
ならばなぜ、ネタニヤフはアメリカの棄権にこれほど激怒したのか。長年、イスラエルを非難するか処罰する安保理決議で拒否権を行使することがアメリカのイスラエル支援の証しだった。
その意味で今回の棄権は「アメリカはもはやイスラエルのご機嫌取りのために拒否権を行使したりはしない」というメッセージとも取れる。これがことさらネタニヤフを怒らせたのは、このところ同様のサインが相次いで発信されていたからだ。