最新記事
テクノロジー

AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

F-16 video shows first-ever human vs. AI aerial dogfight

2024年4月27日(土)12時49分
ブレンダン・コール
米軍のF-16戦闘機

米軍のF-16戦闘機 Yuriko Nakao-Reuters

<AIの導入によって「戦闘機同士」の空中戦はどう変わるのか。「人類vs人工知能」の戦いの結果を米軍は発表しなかった>

米軍は、人間のパイロットが操縦する戦闘機と、人工知能(AI)が操作する自律飛行試験機を使用した画期的な「模擬戦」を実施したと発表した。米空軍基地の上空で行われた初の「人類vs人工知能のドッグファイト」の様子は、動画でも公開された。

■【動画】人類とAIが操縦する戦闘機の「ドッグファイト」、勝つのは? 米軍訓練で史上初の「対決」が実現

これはF16戦闘機を大幅に改造したX62A可変飛行安定性試験機(VISTA)と別のF16戦闘機が、空中で接近戦(ドッグファイト)を行ったもの。米軍によれば今回の模擬戦は、AIの導入によって戦闘機を使用した空中戦がどのように変わり得るかを示すという。

米防衛先端技術研究計画局(DARPA)は4月17日、2機のジェット戦闘機が互いの視界範囲内で、最大時速約1900キロメートルで飛行する様子を捉えた動画を公開した。自律飛行試験機は防御と攻撃の両方の軌道を試し、有人パイロットが操るF16戦闘機から約610メートルのところまで接近したと説明した。

この模擬戦は2023年9月に米カリフォルニア州カーン郡にあるエドワーズ空軍基地の上空で行われたものだ。米軍はこのドッグファイト(視界範囲内での敵機との交戦)の「勝敗」については明かさなかった。

科学メディア「ザ・デブリーフ」は今回の模擬戦について、2019年からAI制御の航空機を使用した自律戦闘システムの開発を行ってきたDARPAの空中戦革新プログラム(ACE)の大きな進展を示すものだったと報じた。

22年からプログラムを開始し10万行超に及ぶコード修正

ACEのプログラム・マネージャーを務めるライアン・ヘフロン米空軍中佐は19日に記者団に対して、「私たちが期待していた以上に順調な進展がみられる」と述べたが、「それ以上に詳しいことは言えない」とした。

フランク・ケンドール米空軍長官はDARPAが公開した動画の中で、X62Aチームが機械学習ベースの自律飛行機能を使ってダイナミックな空中戦を安全に行う方法を示したと説明。さらに2023年は「ACEが空中での機械学習(AI)活用を実現した年」だったとつけ加えた。

今回のプログラムは2022年12月に開始され、X62Aはこれまでに21回の試験飛行を実施。その結果、10万行以上に及ぶソースコードに修正が加えられてきた。

ケンドールは4月に入ってから米上院の公聴会で、「年内に自律飛行のF16に乗る予定」だが、パイロットはAIが機能するのをただ見守るだけになると述べた。「上手くいけばパイロットも私も、航空機を操縦する必要はないだろう」

米空軍テストパイロットスクールの主任テストパイロットであるビル・グレイは、今回のACEプログラムは単なる空中戦ではなくドッグファイトにも焦点を当てたものだと述べた。

「空中で自律型AIシステムの試験を開始するにあたっては、空中戦の問題を解決する必要があった」とグレイは動画の中で述べ、しかし「今回の研究は自律システムにもたらされ得るあらゆる課題に適用される」と述べた。

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ECB、在宅勤務制度を2年延長 勤務日の半分出勤

ビジネス

トヨタ、LGエナジーへの電池発注をミシガン工場に移

ワールド

トランプ氏、米ロ協議からの除外巡るウクライナの懸念

ビジネス

自動車関税率は25%程度に、4月2日に詳細公表=ト
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 2
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「20歳若返る」日常の習慣
  • 3
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防衛隊」を創設...地球にぶつかる確率は?
  • 4
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 7
    祝賀ムードのロシアも、トランプに「見捨てられた」…
  • 8
    ウクライナの永世中立国化が現実的かつ唯一の和平案だ
  • 9
    1月を最後に「戦場から消えた」北朝鮮兵たち...ロシ…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景…
  • 7
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 8
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中