最新記事
中東

フーシ派の巡航ミサイルがイスラエル領内に初めて着弾、さらなる戦火拡大の懸念も

Houthi Cruise Missile Hits Israel in Ominous First

2024年3月21日(木)20時35分
ブレンダン・コール
ヤヒヤ・サリー報道官

フーシ派軍事部門のヤヒヤ・サリー報道官(3月15日、サヌア) Khaled Abdullah-REUTERS

<戦火の拡大を防ぎ、紅海の航行の安全を守るには?>

イエメンのイスラム教シーア派武装組織フーシ派が、イスラエル南端の港湾都市エイラート近郊に着弾した巡航ミサイルは自派が紅海から発射したものだとする声明を発表した。イランの後ろ盾を得たフーシ派がイスラエル領内に飛翔体を着弾させたのはこれが初めてだ。

【動画】激しい爆発音と閃光...フーシ派の巡航ミサイルが着弾した瞬間

親イランのフーシ派は昨年11月以降、イスラエルのガザ地区に対する軍事攻撃に抗議し、パレスチナ人との連帯を示すためと称して、紅海を航行する貨物船などを標的にドローン(無人機)とミサイル攻撃を繰り返してきた。

ただ、これまでにイエメンから発射されたミサイルとドローンは全て、近隣諸国に落下するか、防空システムで迎撃されてきた。

イスラエル国防軍(IDF)が3月19日、「疑わしい空中標的」を追跡し、巡航ミサイルであることを確認したと発表したことを現地紙タイムズ・オブ・イスラエルが伝えた。着弾による人的・物的損害は一切ないという。本誌はこれに関してIDFに確認中だ。

米英主導で「もぐらたたき」

フーシ派は同日にまた、紅海を航行中のマーシャル諸島船籍の液化石油ガス(LPG)タンカーを標的に、軍艦に積載したミサイルを発射したと、同派軍事部門のヤヒヤ・サリー報道官が発表した。

フーシ派はこのタンカーは米企業所有の船だと主張しているが、国際船舶データベース(EQUASIS)によると、ギリシャ企業のナフトマールが所有するタンカーとみられる。

フーシ派に言わせれば、イスラエルと関係がある船舶のみを標的にしているというが、イスラエルと特に関係がない船舶も頻繁に攻撃を受けており、アジアとヨーロッパを結ぶ海上輸送に深刻な混乱が生じている。

これに対し、米英の海軍主導の多国籍軍がフーシ派の拠点に報復攻撃を行っている。米軍の発表によれば、3月18日に商船と米海軍の艦船に対する攻撃の拠点となっているイエメンのフーシ派支配地域の数カ所を攻撃し、ミサイル7基とドローン3機を破壊したという。

「航行の自由を守り、米海軍の艦船と商船がより安全に公海を航行できるよう、これらの行動を実施した」と、米中央軍(CENTCOM)は声明の中で述べている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

鉱工業生産2月は4カ月ぶり上昇、基調は弱く「一進一

ビジネス

午前の日経平均は大幅続落、米株安など警戒 一時15

ワールド

ハマスへの攻撃続けながら交渉している=イスラエル首

ワールド

米関税、日米貿易協定の精神に鑑み疑問なしとしない=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中