「テキサス州は30年以内に独立国になる」と明言...テキサス・ナショナリスト運動の「主張」
TEXIT DREAMS
MARK A PAULDA/GETTY IMAGES
<テキサスの統治はテキサス人の手で、「一つ星の州」に広がるナショナリズムの行方>
テキサス州は合衆国を離脱するべき──そう確信した日を、ITコンサルタントのダニエル・ミラーははっきり覚えている。
1996年8月24日午後2時頃、テキサス州タイラーのホテル。ミラーはその瞬間の衝撃を、テキサス独立戦争中の1836年、テキサス軍を指揮するウィリアム・トラビスがアラモ砦(とりで)を死守する有志を募るために「砂に引いた線」になぞらえる。この戦いを機にテキサスはメキシコからの独立への道をたどり、1845年のアメリカ併合まで9年間、独立国「テキサス共和国」が存在した。
現在50歳のミラーは「テキサス・ナショナリスト運動(TNM)」という団体を率いて、テキサスを再び独立国にすることを目指している。
だが、支持拡大とは裏腹にTNMは挫折を味わってきた。次期大統領選の共和党予備選では、独立の是非を問う州民投票を実現できなかった。独立など幻想だ、少なくとも平和的独立は不可能だと批判もされた。しかし、いずれ成功するとミラーは信じている。
「連邦政府もテキサスもその方向に向かっていると思う。意識的な決定によってか、基本的義務を満たせない連邦制の崩壊によるかは分からないが、テキサスは間違いなく今後30年以内に独立国になるだろう」
この数年、テキサス・ナショナリストたちは精力的に活動してきた。昨年12月、TNMは13万9456人分の署名をオースティンのテキサス州共和党に提出。テキサス独立の是非を問う州民投票を今年3月の予備選に含めるよう求めた。
テキサス州の選挙規定によれば、州民投票の実施に必要な署名の数は「直近の知事選の共和党予備選で候補者が獲得した総得票数の5%」。直近の知事予備選は2022年、全体で195万4172票が投じられ、現職だったグレッグ・アボット知事が選出された。従って州民投票の検討に必要な署名は9万7709人だったが、同州共和党は署名の受理を拒否。マット・リナルディ委員長は提出の遅れと、「署名の大部分が無効だった」ことを理由に挙げた。
ナショナリストらは激怒し、ミラーはポッドキャストで配信している「テキサス・ニューズ」でTNMは「州共和党と戦う」と宣言した。今年1月10日、TNMは州最高裁に「自治権を求めて戦う」ための緊急請願を行ったが、却下された。
分離独立派は州議会にも働きかけ、昨年3月にはブライアン・スレイトン州下院議員(当時)が独立の可能性を問う州民投票の実施を求める法案を提出した(成立はせず)。
「連邦制は破綻し、テキサス人はそのツケを払わされている。テキサス人がテキサスを統治するほうが合理的だ」と、TNMのミラーは言う。