「テキサス州は30年以内に独立国になる」と明言...テキサス・ナショナリスト運動の「主張」
TEXIT DREAMS
独立「宣言」でどう変わる?
ミラーは、州民投票で独立が支持されれば州政府と連邦政府が交渉プロセスを開始し、2つの密接に結び付いた独立国家が誕生すると考えている。「州民投票で独立が支持されても状況がすぐに変わるわけではない。テキサスの住民は独立に向けたプロセスを開始する。州憲法の改正、それに伴う法整備、国際規約・条約・合意の評価と履行、および連邦政府との交渉などだ」
TNMの公式サイトによれば、独立後も当面は「経済的安定」のために米ドルを使用し、金利は引き続きFRB(米連邦準備理事会)が管理することになる。長期的にはユーロのような「交渉に基づく通貨統合」を模索する構えだ。
ミラーは本誌の取材に対し、テキサスは「連邦制度の累積債務を一部肩代わりする義務はない」とし、独立後に負担するかどうかは、米軍も含めた現在の連邦政府の資産についての連邦政府との交渉次第だと示唆した。TNMの計画にはテキサス軍設立も含まれている。
今年1月には、移民問題をめぐって州と連邦当局の対立が激化した。
1月12日、対岸からリオグランデ川の国境を渡ってテキサス州イーグルパスに入ろうとした避難民の女性と子供2人が溺死した。米税関・国境警備局が救出に動いたが、移民取り締まりのために川に面する公園を管理していたテキサス州兵が公園への立ち入りを認めなかったため、活動ができなかった。
2日後、米国土安全保障省はテキサス州のケン・パクストン州司法長官に1月17日までに公園への連邦当局の立ち入りを認めるよう命じ、従わなければ法的措置も辞さないと警告。だがパクストンは拒否し、「テキサスはバイデン政権の破壊的な国境開放政策に屈しない」と明言した。
分離独立を宣言すれば法的議論を呼ぶのはほぼ確実だろう。連邦最高裁は1869年の「テキサス対ホワイト」判決で州の離脱は違憲と判断。この見解に、ミラーは「合衆国憲法第1条第10節は州に禁じる行為を全て列挙しているが、離脱は含まれていない」と反論する。
英コベントリー大学のマット・クボートルップ教授(政治学)によれば「テキサス対ホワイト」判決は「法学的根拠がお粗末」で最高裁で覆される可能性がある。クボートルップは世界各地の独立運動を調査し、テキサス・ナショナリストとも広く交流。最初は彼らを「一種の極右扱いしていた」が、ダラスでの催しで、ロンドンっ子の自分に「イスラム教徒が支配する街に住むのは怖くないか」と質問した男性が退場を促され、いい意味で驚いたという。