公園を軸に、人と緑の共生社会の実現を目指す
2016年4月にリニューアルオープンした、天然芝が広がる南池袋公園。家族連れや近隣のオフィスワーカーらの憩いの場として親しまれている Photo; courtesy of 豊島区
<自然環境と都市機能の調和は世界の多くの都市が抱える課題だ。これまでも緑の保全や創出に取り組んできた東京都は、新たに緑と生きるまちづくりを目指すプロジェクト「東京グリーンビズ」をスタート。そのボードメンバーで、國學院大学観光まちづくり学部教授の下村彰男氏に、緑と公園のあり方について話を聞いた>
東京には2,000m級の山がある山岳部や亜熱帯気候の島嶼部がある一方で、都心部にも地域住民の憩いの場であり、海外の観光客からも注目される緑豊かな名所がたくさんある。上野恩賜公園(以下、上野公園)や新宿御苑、浜離宮といった公園や庭園はもとより、ホテル椿山荘東京やホテルニューオータニなどの宿泊施設、根津神社や湯島天神といった社寺、あるいは東京大学の本郷キャンパスなどの大学キャンパス等々、様々な形式でまとまった緑が存在している。
下村教授は、「これらの多くは社寺や江戸時代に大名がつくった屋敷や庭園だった場所で、古くから比較的まとまった緑地が確保され残されてきたところです。たとえば上野公園は、今でいう江戸時代のガイドブックである江戸名所図会に桜の名所として紹介されているように、長く人々に親しまれてきた場所なのです」と話す。
都市の自然を生かすためには人の手が必要
都市の自然は、人為を排除して保護する原生の自然とは異なる側面を持つ。その多くは人の手による管理を通して守られてきており、適切に人の手を入れることが必要なのだ。
「たとえば東京大学の本郷キャンパスには胸高の直径が10cm以上の樹木が3,000本以上ありますが、これらは植栽管理計画をもとに定期的に観察・診断し、必要な時期に剪定などの手入れをしています。枝が伸び葉が茂りすぎると採光や通水、通風が悪くなり、結果として樹木が弱る原因の一つとなります。そして弱った木を放置すると枯れたり、倒れたりすることがあります。こうした都市の自然と人がうまく付き合っていくためには、人が何らかの形で手を加えなくてはいけないのです」と下村教授。
都市の緑や公園は、これまでも人の手によって整備されたり、管理され守られたりしてきたが、公園という場所を活かした多面的な取り組みも進んでいる。
「都心部にある南池袋公園は良い例です。誰もが気軽に立ち寄ることができる開放的なつくりで、カフェもある。地域住民や近隣で働く人たち、観光客など多様な人たちがくつろぐ場所となっています。都心部の幾つかの公園で、より開放的になりカフェや図書館が増えているのは、都市の緑や公園に対する人々の認識や意義づけが変化してきたこととともに、制度の改正で飲食店などの設置制限が緩和されるなど民間業者との連携が促進されるようになったことも挙げられます」