最新記事
環境

公園を軸に、人と緑の共生社会の実現を目指す

2024年3月19日(火)11時30分
※TOKYO UPDATESより転載
南池袋公園

2016年4月にリニューアルオープンした、天然芝が広がる南池袋公園。家族連れや近隣のオフィスワーカーらの憩いの場として親しまれている Photo; courtesy of 豊島区

<自然環境と都市機能の調和は世界の多くの都市が抱える課題だ。これまでも緑の保全や創出に取り組んできた東京都は、新たに緑と生きるまちづくりを目指すプロジェクト「東京グリーンビズ」をスタート。そのボードメンバーで、國學院大学観光まちづくり学部教授の下村彰男氏に、緑と公園のあり方について話を聞いた>

東京には2,000m級の山がある山岳部や亜熱帯気候の島嶼部がある一方で、都心部にも地域住民の憩いの場であり、海外の観光客からも注目される緑豊かな名所がたくさんある。上野恩賜公園(以下、上野公園)や新宿御苑、浜離宮といった公園や庭園はもとより、ホテル椿山荘東京やホテルニューオータニなどの宿泊施設、根津神社や湯島天神といった社寺、あるいは東京大学の本郷キャンパスなどの大学キャンパス等々、様々な形式でまとまった緑が存在している。

下村教授は、「これらの多くは社寺や江戸時代に大名がつくった屋敷や庭園だった場所で、古くから比較的まとまった緑地が確保され残されてきたところです。たとえば上野公園は、今でいう江戸時代のガイドブックである江戸名所図会に桜の名所として紹介されているように、長く人々に親しまれてきた場所なのです」と話す。

newsweekjp_20240314035816.jpg

東京都台東区の上野公園の桜木川歩道。一年を通じて自然の移り変わりが楽しめ、観光客からも人気を集めている apiguide-Shutterstock

都市の自然を生かすためには人の手が必要

都市の自然は、人為を排除して保護する原生の自然とは異なる側面を持つ。その多くは人の手による管理を通して守られてきており、適切に人の手を入れることが必要なのだ。

「たとえば東京大学の本郷キャンパスには胸高の直径が10cm以上の樹木が3,000本以上ありますが、これらは植栽管理計画をもとに定期的に観察・診断し、必要な時期に剪定などの手入れをしています。枝が伸び葉が茂りすぎると採光や通水、通風が悪くなり、結果として樹木が弱る原因の一つとなります。そして弱った木を放置すると枯れたり、倒れたりすることがあります。こうした都市の自然と人がうまく付き合っていくためには、人が何らかの形で手を加えなくてはいけないのです」と下村教授。

newsweekjp_20240314035446.jpg

下村彰男教授。國學院大学たまプラーザキャンパスにて

都市の緑や公園は、これまでも人の手によって整備されたり、管理され守られたりしてきたが、公園という場所を活かした多面的な取り組みも進んでいる。

「都心部にある南池袋公園は良い例です。誰もが気軽に立ち寄ることができる開放的なつくりで、カフェもある。地域住民や近隣で働く人たち、観光客など多様な人たちがくつろぐ場所となっています。都心部の幾つかの公園で、より開放的になりカフェや図書館が増えているのは、都市の緑や公園に対する人々の認識や意義づけが変化してきたこととともに、制度の改正で飲食店などの設置制限が緩和されるなど民間業者との連携が促進されるようになったことも挙げられます」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中国防相会談、米の責任で実現せず 台湾政策が要因

ワールド

ロシア新型ミサイル攻撃、「重大な激化」 世界は対応

ビジネス

米国株式市場=上昇、ダウ・S&P1週間ぶり高値 エ

ビジネス

NY外為市場=ドル1年超ぶり高値、ビットコイン10
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中