最新記事
環境

公園を軸に、人と緑の共生社会の実現を目指す

2024年3月19日(火)11時30分
※TOKYO UPDATESより転載

公園が地域コミュニティ再生の場に

さらにこれからは住民が、公園とどのように関わるかが重要になる。下村教授が先行事例としてあげるのは、住民と行政がアイデアを出し合って一から計画し整備が進められた練馬区の立野公園だ。

「立野公園では今も日々の清掃を住民グループが行っています。また、小学校の跡地や隣接する公園を中心に再開発した千代田区神田淡路町にあるワテラス(WATERRAS)も地域拠点型の開発事例です。オフィスだけでなく学生のための住居、人々の交流を促す公園等が整備され、古くから続く神田祭にもワテラスとして神輿を出しています。地域コミュニティの核となり、エリアマネジメントの拠点となっているのです」

こうしたエリアマネジメント拠点のモデルケースとなるのが、かつての神社だ。地域のあらゆる世代の人たちが役割分担をしながら神社を核とした地域の行事や運営に参加し、お祭りは幅広い年齢の人たちが参加してにぎわった。老朽化したときも地域住民がお金を出し合い修復していたのは、地域の資源であると認識されていたからだ。

住民が緑や公園をただ楽しむだけではなく、維持、運営にも大きな役割を果たすようになれば、地域や土地への愛着や誇りが醸成され、地域コミュニティの再構築につながるだろう。これからの人と自然が共生するまちづくりは、地域の歴史に思いをはせながら、人々が協働して緑や公園を守り育て活かしていくことが重要だといえる。


下村彰男
newsweekjp_20240314043233.jpg國學院大学観光まちづくり学部教授。東京大学農学部林学科卒業。東京大学大学院農学生命科学研究科教授などを務めた後2022年より現職となる。専門は風景計画、造園学、観光・レクリエーション計画。

newsweekjp_20240314040329.jpg
東京都は、100年先を見据えた"みどりと生きるまちづくり"をコンセプトに、東京の緑を「守る」「育てる」「活かす」取組を進めています。
森林循環や生物多様性の拠点形成、地域の方々と協働した緑化活動などを通して、「自然と調和した持続可能な都市」への進化を目指しています。
https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/basic-plan/tokyo-greenbiz-advisoryboard

取材・文/今泉愛子
写真/金子怜史

※当記事は「TOKYO UPDATES」からの転載記事です。
logo_tokyoupdates.png

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独IFO業況指数、11月は予想外に低下 景気回復期

ワールド

和平案巡り協議継続とゼレンスキー氏、「ウクライナを

ワールド

中国、与那国のミサイル配備計画を非難 「大惨事に導

ワールド

韓国外為当局と年金基金、通貨安定と運用向上の両立目
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中