世界がまだ気付いていない「重大リスク」...イスラエルとヒズボラの「戦争が迫っている」と言える理由
The Inevitable War
ヒズボラのメンバーと支持者(2015年8月) Ali Hashisho-Reuters
<レバノンを拠点とする武装組織ヒズボラとイスラエルの間で、このままでは6~8カ月のうちに戦争が勃発。その要因を徹底分析>
レバノンのイスラム教過激派組織ヒズボラとイスラエルの間で、今後6~8カ月のうちに戦争が勃発する可能性が高い。
その根拠をできる限り明確にしておこう。この点に関する今までの分析はほぼ一様に、ヒズボラとイスラエルは共に戦争を望んでいないと結論付けてきたからだ。
これらの分析は、現状を根拠に未来を予測している。だが誰もが知るとおり、中東情勢は極めて流動的に変化する。アナリストや関係国の政府関係者は自らの仮定を再検討し、予測をアップデートすべきだ。
これまでヒズボラとイスラエルは小競り合いを続けてきたが、全面戦争には至っていない。一見して自制しているように見えるものの、両者が戦争を望んでいないというわけではない。むしろさまざまな要因のために、瀬戸際で開戦を踏みとどまっているのが実情だ。
歯止めになっていると考えられる要因は、いくつもある。例えばイラン指導層の戦略的な計算、中東戦争の回避を目指すアメリカの思惑、パレスチナ自治区ガザでの戦闘の経過、そしてアメリカの国内政治。だが、これらの要因が今後も紛争勃発を防ぐと当てにしてはいけない。事実、こうした制約は失われつつある。
ヒズボラが戦争を望んでいないという主張の前提には、イランの意図に関するさらなる主張がある。イランが支援するヒズボラとイスラエルとの衝突を、イラン自身が避けたがっているというものだ。
この2つの主張を支える論理に、もっともな点はある。ヒズボラはイラン革命防衛隊の遠征部隊として活動し、シリアのアサド政権による反体制派の弾圧や、イランが後押しするイラクの民兵組織への協力、イエメンのシーア派武装勢力フーシ派への訓練などで重要な役割を果たしてきた。
しかし、ヒズボラには革命防衛隊の一部門である以前に、イランの抑止力として機能するという役割があった。その点は今も変わらない。
ヒズボラと、同組織が保有しているとされる10万発以上のロケット弾は、イランの報復能力を支えている。イスラエルやアメリカがイランの核開発の拠点を攻撃すれば、ヒズボラの兵器がイスラエルの人口密集地に撃ち込まれ、壊滅的な被害を与えるだろう。
イランの指導層は打倒イスラエルという目標より、体制の存続に力を入れている。ヒズボラへの支援で得た抑止力を失ってまでイスラエルを攻撃しようとは考えていない。