トランプの再登板で世界はグリーンになる「不都合な真実」
WRONG ON NATURAL GAS
欧州はアメリカ産LNGに依存(ポーランドに入港する米タンカー) BARTEK SADOWSKIーBLOOMBERG/GETTY IMAGES
<天然ガス生産・輸出を制限するバイデン政権は、供給を断たれるアメリカ以外の国々での石炭回帰を招く。破滅的な政策を覆すことが国内外での排出削減につながる。 本誌「もし『トランプ大統領』が復活したら」特集より>
ドナルド・トランプ前米大統領が再び政権を率いたら、地球環境にとってうれしいニュースになりそうだと、筆者は考える。
格好の証拠が、アメリカの液化天然ガス(LNG)輸出に関して、ジョー・バイデン米大統領が1月26日に行った発表だ。
それによると、エネルギー省(DOE)が環境などへの影響を精査するまで、LNGの新規輸出認可が一時的に停止される。
だがアメリカのLNG輸出認可停止は、世界各地で石炭利用を拡大させ、世界の二酸化炭素(CO2)排出量を増やすことになりかねない。
既に欧州は、ロシアの天然ガス供給停止によるエネルギー不足を受けて、石炭に目を向けている。
世界全体の排出量を削減するには、可能な限り石炭利用を避けなければならない。
同じく重要なことに、輸出認可停止はアメリカの敵国の利益になるだろう。
LNG価格は生産量見通しに基づくため、バイデンの決定は主要生産国ロシアのLNGの価格も押し上げる。思いがけない大儲けだ。
「反環境」的な中国も後押ししそうだ。この16年間に、天然ガスへの切り替えが進むアメリカのCO2排出量は約14億トン減少したが、中国では約58億トン増加した。
一方、アメリカの同盟国は打撃を受ける。
最も影響が大きいのは、ロシアが天然ガス供給を停止した2022年以降、アメリカからの輸入を拡大している欧州だ。
DOE傘下のエネルギー情報局(EIA)によれば、昨年上半期の米LNG輸出量は世界1位で、日量平均116億立方フィート(約3億3000万立方メートル)。
昨年の最大の輸出先が欧州地域だった。
アメリカは排出削減になるが
アジアも同様だ。同盟国のインドや韓国、日本は排出量削減と天然ガス利用の拡大を望んでいるが、アメリカが供給を断てば石炭回帰を迫られる。
石炭は中国がより容易に提供できるコモディティ(1次産品)だ。
バイデンはあらゆる手を尽くして、アメリカの天然ガス生産量を減らそうとしているが、この政策を覆すことが国内外での排出削減につながる。
バイデンは21年、大統領就任初日に国有地・水域での掘削許可を暫定停止し、カナダと米メキシコ湾岸を結ぶキーストーンXLパイプラインの建設認可を取り消す大統領令に署名した。
化石燃料は過渡期にあり、遠からず不要になると主張している。
バイデンの考えが正しくても(実際には誤りだが)意義ある気候変動対策とは言えない。
米政府が資金提供する大気研究センターの評価モデルを用いた予測では、アメリカが化石燃料使用を即時完全停止しても、地球の気温は2100年までに0.2度未満しか下がらない。
中国やインド、ロシア、アフリカ・中南米諸国が石炭利用を拡大しているからだ。
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