NATO、ロシア国境近くに防空システムを配備
NATO Moving Missiles Closer to Russia's Borders

ポーランドの別の場所から首都ワルシャワ近くに再配備されたパトリオット地対空ミサイル(2003年2月) (Photo by Jaap Arriens/NurPhoto)
<「次の標的」を懸念するバルト3国の声に応え、地対空ミサイルなどを配備へ。大規模な演習も進行中だ>
NATO諸国が、バルト海に面したリトアニアに防空システムを設置する。ロシアの脅威に直面するリトアニアなどバルト3国の要望に応えたものだ。
リトアニアのアルビダス・アヌサウスカス国防相は3月7日の記者会見で、この防空システムの運用は年内に始まる予定だと述べた。NATOは昨年夏にリトアニアの首都ビリニュスで行われた首脳会議で、加盟国が順繰りにバルト諸国に防空システムを展開することで合意した。
アヌサウスカスは、第一弾としてリトアニアに防空システムを送り込むのがどの国になるかは明らかにしなかった。ただし、送り込まれる兵器に対空防衛システムのパトリオットで、それもパトリオットはアメリカではなく欧州のNATO加盟国から提供されると語った。
リトアニア国営テレビ・ラジオ局は「この運用が数カ月間、1度きりで終わるのではなく、継続的にわが国の防空能力を大幅に引き上げることが期待される」というアヌサウスカスのコメントを伝えている。
「NATOvsロシア」に拡大?
ロシアのウクライナ侵攻の行き着く先は、ロシア対NATOの大規模な戦争になるのではないか----そんな懸念の声が複数の欧州諸国から上がっている。ここ数カ月、NATOはロシアやベラルーシとの国境沿いの防衛システムの段階的な強化に努めてきた。ロシアと国境を接するポーランドや、リトアニアとラトビア、エストニアのバルト3国などの国々で、加盟32カ国全てから集まった9万人を超える兵士が参加する演習を行ってもいる。
NATO諸国の中でもバルト3国など一部の国々は、ロシアの次の侵攻に備えるべきだと強く訴えている。エストニアの情報当局は、ロシアが今後10年以内にNATO諸国に対する戦争を準備していると主張している。
ウクライナでの戦争が始まって以降、ロシアと欧米との緊張は高まったままだ。NATOはウクライナを支援する姿勢を堅持している。
一方でロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ政府にNATOが影響力を及ぼしていることを、侵攻に「踏み切らざるを得なかった」理由の1つとして挙げている。またプーチンは、ウクライナが中立維持に同意しない限り侵攻を終わらせるわけにはいかないとも述べている。