最新記事
ペット

「濃厚接触」がペットの健康リスクになる現実...動物の介在で人間界の感染拡大経路も「複雑」に

Do We Make Our Pets Sick?

2024年3月19日(火)18時30分
ジェス・トムソン(科学担当)
インフルエンザなど体調が悪い際はペットとの濃厚接触は避けよう PHOTOBOYKO/ISTOCK

インフルエンザなど体調が悪い際はペットとの濃厚接触は避けよう PHOTOBOYKO/ISTOCK

<最新研究により、ペットが飼い主から病気をうつされるリスクが従来考えられていたよりも高いことが明らかになった。特に密接に接触するペットは感染症のリスクが高いと指摘されている>

家で飼われているペットが人間から病気をうつされる例が、従来考えられていたよりも多い可能性があることが最近の研究で明らかになった。

学術誌「人獣共通感染症」でこのほど発表された論文によれば、飼い主と濃厚接触しているペット、つまり同じベッドで寝たり、人間の過ごす場所でゴロゴロしたり食事を取ったりしているペットは、人間から感染症をうつされるリスクが高いという。

人間とそれ以外の動物の両方にうつる感染症を人獣共通感染症という。人間のかかる感染症の60%以上が人獣共通感染症由来で、鳥インフルエンザや豚インフルエンザ、新型コロナウイルスがいい例だ。

一方で、この論文で取り上げられているのは、人間の病原体が他の動物に伝播するケース。「ペットはたぶん、これまで考えられてきたよりずっと(人間の病気の病原体に)感染しやすい」と、論文の筆者で米フロリダ大学のベンジャミン・アンダーソン助教は述べている。

論文では豚インフルエンザやヒトノロウイルス、新型コロナウイルスに結核、デング熱などの感染症について、人間から動物への感染が起こることが示されている。多いのは犬やネコへの感染だが、馬、フェレット、オウムへの感染例も少数ながら存在する。

通常、ある動物がかかる感染症に他の種の動物がかかることはない。特定の構造を備えた病原体しか、それぞれの動物の細胞に侵入することができないからだ。「人間の私に感染するウイルスは、犬やネコの受容体には結合しない」と、アンダーソンは言う。

だが病原体が変異し、異なる種の動物の細胞にも侵入できる構造を手に入れることがある。これにより、異種間の感染が可能になるわけだ。

くしゃみからも隔離を

研究チームはこの論文が、人から動物への病気感染の危険性に関する注意喚起となるとともに、獣医師にとって特定の疾患の原因に関する参考情報になればと考えている。

「患者が人間なら、周囲に動物や病気になったペットはいなかったかと聞くことができる。だが動物が病気になった場合、そうした情報を得て人間の病気との関連を確かめられるとは限らない」と、アンダーソンは言う。

人間から動物への感染は、人間にとってもリスクだ。「長い時間の中で人と動物は病原体を繰り返しやりとりしてきた。それが病原体が新しい宿主に感染できるような変異を起こす可能性を高める要因となっている」からだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中