最新記事
韓国政治

「33万円のディオールのバッグをもらっちゃった」妻の動画拡散で韓国・尹政権は大ピンチ

The Dior Bag Uproar

2024年2月13日(火)14時13分
ウヌ・リ(ライター)
尹大統領夫妻

4月に総選挙を控え、スキャンダルに揺さぶられる尹大統領夫妻 ISABEL INFANTESーREUTERS

<大統領夫人が高級ブランドバッグを受け取る動画が拡散されて波紋が広がるなか、「左派の政治工作」だと大統領は一蹴しているが...>

2月7日、韓国の国営放送KBSは、旧正月に合わせて尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の特別インタビュー番組を放送した。

番組は事前収録で和やかに進んだが、ある瞬間、緊張が走った。聞き手のキャスターが「(妻と)ブランドバッグ論争の話をしたのでは?」と、大統領に尋ねたのだ。

ブランドバッグ論争とは昨年11月に拡散した動画をめぐる騒動。動画には、大統領夫人の金建希(キム・ゴンヒ)が2200ドル(約33万円)のクリスチャン・ディオールのバッグを知人から受け取る場面が映っていた。

韓国では法律で公職者とその配偶者が1回につき約750ドル(約11万円)以上の金品を受け取ることが禁じられている。動画は波紋を呼び、しかも尹政権が火に油を注いだ。

当初、大統領府は沈黙し、12月には「(この問題について)答えるつもりはない」と記者団に述べた。

この素っ気ない態度は理解できる。金品授受禁止法は違法な金品を受け取った公職者に対する罰金や刑事罰を定めているが、配偶者の罰則規定はない。

配偶者が違法な金品を受け取ったことを公職者が当局に報告しなければ、処罰の対象となる可能性がある。だが授受の事実を知らなければ、この限りではない。

それでも動画で事実を知ったのだから通報すべきだったと、尹は批判された。

1月、政府は問題のバッグを大統領の記録物として国庫に預けたと発表した。もっとも贈答品が記録物に認定されるには、公務中に大統領かその代理人が受け取っていなければならない。バッグは個人的な便宜を図るためにもらった物ではないので賄賂ではないと、政府は説明した。

牧師が動画を隠し撮り

通常、賄賂や不適切な働きかけについてはまず国民権益委員会が調査を行うが、今のところ委員会に動きはない。

大統領夫人は倫理にもとる報道の被害者であり刑事責任はないと、与党「国民の力」は力説。法の解釈と報道倫理をめぐり、論争が白熱した。動画を撮影したチェ・ジェヨンは牧師で、金の亡き父と面識があったという人物だ。

展覧会
奈良国立博物館 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」   鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国最大野党の李代表に逆転無罪判決、大統領選出馬に

ビジネス

独VWの筆頭株主ポルシェSE、投資先の多様化を検討

ビジネス

日産、25年度に新型EV「リーフ」投入 クロスオー

ビジネス

通商政策など不確実性高い、賃金・物価の好循環「ステ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 5
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中