イラクの親イラン武装組織「カタイブ・ヒズボラ」司令官暗殺で、高まる米軍追放の怒声と報復攻撃の脅し
Iraq's Hezbollah Issues New Threat to US and Israel After Officials Killed
米軍はここ数カ月、イラクとシリアの駐留部隊を狙った攻撃に対し、何回か空爆を行ってきたが、先月末ヨルダンとシリアの国境地帯にある米軍基地がドローン攻撃を受け、米兵3人が死亡したことで米政界の風向きは一変した。報復攻撃を支持する声が一気に高まり、ジョー・バイデン米大統領は2月2日、イラクとシリアの7カ所の軍事施設にある80余りの標的に対する空爆を命じた。これらは全て、イランの革命防衛隊と「イラクのイスラム抵抗運動」傘下の武装組織が使用しているとみられる施設だ。
ホワイトハウスはこれについて、この地域の米兵に対するさらなる攻撃を抑止するため、追加的な作戦遂行を計画した結果だと説明した。
米兵3人が死亡したドローン攻撃については、カタイブ・ヒズボラの犯行とみられたため、米軍の報復を恐れたのか、事件直後の1月末、この地域における米軍に対する攻撃を全て中止すると宣言した。アルサーディ司令官殺害については、非難声明を出したものの、米軍に対する軍事作戦を即座に再開するとは言っていない。
だが報道によれば、「イラクのイスラム抵抗運動」によるものとみられる米軍に対する攻撃は今も続いている。2月5日には、シリア東部デリゾール県のアル・オマール油田内の米軍が支援するクルド人主導の反政府組織「シリア民主軍(SDF)」の訓練施設がドローン攻撃を受け、SDFの戦闘員6人が死亡した。
イラク政府とシリア政府はいずれも、米軍が自国の領土で許可なく作戦を実行したことを非難している。とりわけイラク政府にとって、これはデリケートな問題だ。イラクは2003年に米主導の有志連合の侵攻を受けてサダム・フセイン体制が転覆した後、アメリカと安全保障に関する二国間協定を結んで連携してきた。
だがその後、両国の関係は悪化している。過激派組織「イスラム国(IS)」の掃討に成功したものの、それによって受けた打撃からまだ完全に立ち直っていないイラクにとって、アメリカとイランの緊張激化と、それによって生じた米軍とイラクの親イラン派民兵組織との衝突が、国を不安定化させる脅威となっている。
イスラエルとハマスの戦争、そしてアメリカによる血の報復攻撃が引き起こすであろう新たな暴力の連鎖を受けて、イラクでは駐留米軍を外交または武力によって国外に追放すべきだという声が高まっている。
エスカレーションはアメリカのせい
米軍によるカタイブ・ヒズボラの攻撃を受けて、バグダッドでは少なくとも1台の車が炎上。この現場の周りで集まった人々が米軍の攻撃に抗議するなど、緊張がますます高まっている。イスラエルとの戦争で前線にいる複数のパレスチナ組織もこの攻撃に怒りを表明し、非難声明を出した。
ハマスは声明の中で、「今回の攻撃はイラクの主権と安全保障を侵害する行為であり、シオニストによる占領や拡張主義的な計画を後押しするものと考える」とアメリカを非難。犠牲者に哀悼の意を表し、「バイデン米政権は、ガザ地区のパレスチナ人に対するナチス式の集団虐殺(ジェノサイド)を支援することで、中東地域における緊張や暴力のエスカレーションを煽っている」と主張。さらに「シオニストによる我々パレスチナ人およびアラブ人の土地の占領を終わらせる以外に、この地域に安定や平和が訪れることはないと再認識した」と述べた。
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