アマゾン違法伐採の抑制、東南アジアでスマート農業を推進...「開発協力×宇宙技術」が変えていく世界【JICA×JAXA】
JAXAの陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)のCGイメージ 画像提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
<10年にわたって防災・農業・保健など多くの分野で連携してきたJICAとJAXA。その連携の中で生み出された成果、今後の可能性について、JICAガバナンス・平和構築部STI・DX室の高樋俊介室長と、JAXAバンコク駐在員事務所の中村全宏所長が語り合う>
JICAとJAXAが連携協定を締結してから2024年4月で10年を迎えます。開発協力×宇宙技術の可能性を引き出したこの連携は、これまで何を生み出したのか、そして今後どのように展開していくのか──。JAXAバンコク駐在員事務所の中村全宏所長と、JICAガバナンス・平和構築部STI・DX室の高樋俊介室長が熱く語ります。
78か国で違法伐採の抑制に貢献
高樋 この10年のJAXAとのさまざまな連携の中でも、大きな成果を挙げることができた点で言うと、やはり、違法伐採の抑制に貢献したJICA-JAXA熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST)です。天候や雲に影響されずに観測が可能な衛星「だいち2号」のデータを用い、熱帯林減少を早期発見するこのシステムを開発し、運用することができました。
中村 78か国で違法伐採を検出できたことは、JAXA関係者一同も誇りに思っています。テクノロジーを開発し、完成させることはもちろん大事ですが、社会経済や地球環境にとってそのテクノロジーが生かされることこそ、我々研究・開発機関にとって大きな喜びです。ブラジルなどの関係国政府から受けた感謝も大きなモチベーションになりました。
高樋 ブラジルではJJ-FASTの運用と同時にAI技術を用いたアマゾンにおける違法森林伐採の予測システムの構築など、ブラジル政府の森林管理能力の向上を図ることもできました。JICAらしい協力と言えます。78か国の途上国で衛星データをシェアして、違法伐採を抑制したこの一連のプロジェクトは、JICAにとっても、衛星データと宇宙技術、そしてオープンイノベーションを活用した協力の在り方を学ぶ機会にもなりました。
また、宇宙機関を新しく設立する途上国も増えている中、宇宙人材の育成に向けてもJAXAとの連携は欠かせません。2019年から始まった宇宙技術活用ネットワーク構想(JJ-NeST)では、東南アジアを中心に、将来、自国での宇宙技術開発や利用を担う実務者・研究者に、JAXAの研究者をはじめ、民間企業の実務担当者から最先端の技術を学ぶ機会を提供し、日本の大学院への留学も支援しています。
中村 JJ-FASTは、テクノロジーの活用で今ある顕在化した社会課題に対してソリューションを提供し、環境を保護し、問題を改善していく直接的な取り組みです。他方、JJ-NeSTのような人材育成は、10年後、15年後を見据えた未来への取り組みです。日本での学びや培った人脈を生かして彼ら彼女らが活躍し、いつか一緒に仕事ができることを楽しみにしています。