最新記事
中東

「正確かつ合法的な攻撃に最適な兵器」イスラエル軍ドローンの操縦士が語る戦場の現実

Lethal but Legal Weapon

2024年1月18日(木)11時13分
トム・オコナー(本誌中東担当)

240123p36_DRN_03v2.jpg

イスラエル軍の爆撃で破壊された住宅跡に集まる人たち(昨年12月、ガザ地区南部ラファ) SHADI TABATIBIーREUTERS

イスラエルは公式に認めていないが、レバノンでは先日、イスラエル軍のものと思われるドローン攻撃によって、ハマスとイスラム教シーア派組織ヒズボラの幹部2人が殺害された。

今回の戦争が新たな段階に入ったことを告げる展開かもしれない。

アメリカが「より正確で、より特定された標的」への攻撃を求めて圧力を強めるなか、イスラエル軍はガザに展開する地上部隊を縮小し、ドローンによる精密攻撃を重視する方向にある。

その場合、標的を事前に設定できるのであれば、まずは軍の法律部門が主導して確立したプロトコルに基づき情報を精査。

標的が合法的な軍事的脅威と判断されたら、その先は武器の専門家や作戦の指揮官、そして法律顧問が協議して作戦の詳細を詰める。

空中で新たな標的を見つけた場合はどうか。

現地の状況は流動的だから、そういうケースも珍しくない。しかも通常より迅速な対応が求められる。

それでもイスラエルの兵士には国際法上の区別(軍事目標と民間人・施設の区別)と均衡性(想定される軍事的利益に比べて不相応な武力を用いない)の原則に基づいて行動することが期待される、と前出の法律顧問は言う。

「救急車攻撃」は封印

この法律顧問によれば、イスラエル軍が殺傷力のある武器を向けるのは戦闘員または直接的な脅威をもたらす者に対してのみであり、軍務に就けそうな年齢層の男性を無差別に標的としているとの主張は当たらないという。

それでも間違って民間人に多くの被害が出てしまうことはある。

その場合は、やはり独立性の高い機関で状況を精査し、必要に応じて軍の法律顧問団による調査を求める。

こういうシステムがあるから自分は「安心して」作戦を遂行できる、と大尉Dは言った。

自分のやっていることは国際法の許容範囲内だと確信できるからだ。

それでも戦場の現実は日々刻々と変わるから、それに合わせて軍の作戦遂行手続きには修正が加えられるそうだ。

なにしろ「こちらも敵も次々に新しい技術」を投入しているし、民間人の死傷者数に関する懸念から新たな指示が出されることもあるからだ。

「いろんな基準や手続きが変更された。周囲の民間人を利用するハマスの手口がますます巧妙になっているからだ」と大尉Dは言い、「こちらもそれだけ賢くならねばならない」と付け加えた。

例えば、ドローンで救急車を攻撃することはやめた。

ハマスの戦闘員が救急車を軍事目的で使用していると確認できた場合でも、「民間人に多大な被害が出る事態を防ぐため」に、あえて封印した。

それでも大尉Dは、ドローンが有効な兵器だと確信している。なぜか。

「結局こいつは戦争なんだ。戦場の混沌の中で圧倒的なベストを尽くすため、より多くの無人航空機を、より多くの精密な兵器を使うんだ」

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中