「猫も人間が好き。ただ犬より愛情表現が分かりにくい」最新科学が解き明かす猫の本当の気持ち
THE MIND OF A CAT
「子犬のような目」ができない
拒絶されるのはつらいものだ。猫が何かと物議を醸すのは、そのせいもあるのだろう。
私たちが仲良くしようとする誘いに、猫は無関心だったり、怯えたり、攻撃的に反応したりすることも少なくない。
多くの人が猫に何回も拒絶されて、自分は猫に好かれていない、わざわざ手をかけてやる価値がないと諦めている。
犬は私たちの関心を引こうと必死になるのに、わざわざこの気まぐれな毛玉の世話をしなくてもいいだろう、と。
猫がいわれのない非難を受ける理由の1つは、単純なコミュニケーションのすれ違いかもしれないと、ビターリら猫擁護派は主張する。
例えば猫には、犬のようにかわいい顔をして私たちの関心を引こうとするような表情筋がない。
数千年にわたる家畜化と繁殖の過程で進化した犬は、顔の速筋線維がオオカミの2~3倍になり、豊かな表情を獲得した。
なかでも目の上にある特殊な筋肉は「子犬のような目」を演出し、人間から赤ちゃんに向けるような甲高い声や表情を引き出す。
対照的に、猫は眉を上げたり悲しそうな顔をしたりできない。彼らの表情の欠如は人間を混乱させるシグナルになりかねないことが、研究で明らかになった。
これはカナダのゲルフ大学の研究チームが19年に行ったもので、85カ国6000人以上の参加者に猫の画像を見せて、ネガティブな反応をしたときの顔か、ポジティブな反応をしたときの顔かを判定させた。
正解率が75%を超えたのは参加者のわずか13%。最も成績がよかったのは獣医師など動物の専門家で、猫のそばにいることが多い人々だった。研究チームに加わらなかったビターリもテストに参加して、満点だった。
猫のシグナルが微妙なことには理由がある。
動物の思考と学習について研究している米オークランド大学のジェニファー・ボンク教授によると、野生の猫のほとんどは孤独を好む(ネコ科の中でも群れで生活するライオンは例外だ)。
犬が群れの仲間に危険や新たな獲物について知らせるのと違って、猫は過去数千年にわたって明らかなシグナルを発達させるような進化上の圧力にはあまりさらされなかった。