「猫も人間が好き。ただ犬より愛情表現が分かりにくい」最新科学が解き明かす猫の本当の気持ち

THE MIND OF A CAT

2023年12月28日(木)17時26分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

231114P18NW_NKO_06v2.jpg

YUL38885/ISTOCK

「子犬のような目」ができない

拒絶されるのはつらいものだ。猫が何かと物議を醸すのは、そのせいもあるのだろう。

私たちが仲良くしようとする誘いに、猫は無関心だったり、怯えたり、攻撃的に反応したりすることも少なくない。

多くの人が猫に何回も拒絶されて、自分は猫に好かれていない、わざわざ手をかけてやる価値がないと諦めている。

犬は私たちの関心を引こうと必死になるのに、わざわざこの気まぐれな毛玉の世話をしなくてもいいだろう、と。

猫がいわれのない非難を受ける理由の1つは、単純なコミュニケーションのすれ違いかもしれないと、ビターリら猫擁護派は主張する。

例えば猫には、犬のようにかわいい顔をして私たちの関心を引こうとするような表情筋がない。

数千年にわたる家畜化と繁殖の過程で進化した犬は、顔の速筋線維がオオカミの2~3倍になり、豊かな表情を獲得した。

なかでも目の上にある特殊な筋肉は「子犬のような目」を演出し、人間から赤ちゃんに向けるような甲高い声や表情を引き出す。

対照的に、猫は眉を上げたり悲しそうな顔をしたりできない。彼らの表情の欠如は人間を混乱させるシグナルになりかねないことが、研究で明らかになった。

これはカナダのゲルフ大学の研究チームが19年に行ったもので、85カ国6000人以上の参加者に猫の画像を見せて、ネガティブな反応をしたときの顔か、ポジティブな反応をしたときの顔かを判定させた。

正解率が75%を超えたのは参加者のわずか13%。最も成績がよかったのは獣医師など動物の専門家で、猫のそばにいることが多い人々だった。研究チームに加わらなかったビターリもテストに参加して、満点だった。

猫のシグナルが微妙なことには理由がある。

動物の思考と学習について研究している米オークランド大学のジェニファー・ボンク教授によると、野生の猫のほとんどは孤独を好む(ネコ科の中でも群れで生活するライオンは例外だ)。

犬が群れの仲間に危険や新たな獲物について知らせるのと違って、猫は過去数千年にわたって明らかなシグナルを発達させるような進化上の圧力にはあまりさらされなかった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRBの独立性強化に期待=共和党の下院作業部会トッ

ビジネス

現代自、関税対策チーム設置 メキシコ生産の一部を米

ビジネス

独IFO業況指数、4月86.9へ予想外の上昇 貿易

ワールド

カシミール襲撃犯「地の果てまで追う」とモディ首相、
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「iPhone利用者」の割合が高い国…
  • 10
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中