「猫も人間が好き。ただ犬より愛情表現が分かりにくい」最新科学が解き明かす猫の本当の気持ち

THE MIND OF A CAT

2023年12月28日(木)17時26分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

231114P18NW_NKO_08.jpg

猫も飼い主のことを気にかけていることが最新の研究で分かってきた SUDO TAKESHI/GETTY IMAGES

だが、猫もシグナルを送る。

それに気付くには、気を付けるべきポイントさえ押さえていればいい。

研究者たちは猫のシグナルについて野良猫の社会的交流の研究から多くを学んできたと、動物行動学者で猫の社会的行動にも詳しいミケル・デルガドは言う。

野良猫のゆっくりとしたまばたきはリラックスしていて友好的だというシグナルだ。仲良しの猫同士はしょっちゅうお互いをなめたり毛繕いしたり、頬や額をこすり合ったりもする。

飼い猫が人間の腕に額をこすり付けるのは普通、猫の社会圏に受け入れているという意味だ。

猫が別の猫に近づくときに尻尾を上げていれば、それは普通「敵意はありませんよ」という意味だ。

目を合わせてにらみ付けると大抵は威嚇されていると解釈し、シャーッという声を出したり、うなったり、耳を後ろに倒し尻尾を足の間に入れて体を小さくしたりする。

猫は自由気ままでよそよそしく見えがちだが、実は飼い主によく注意を払っていることが研究によって分かっている。

19年、上智大学総合人間科学部心理学科の齋藤慈子(あつこ)准教授は78匹の猫に飼い主の声を録音したものを聞かせた。

飼い主は一般名詞やほかの猫の名前を口にし、最後にその猫の名前を呼ぶ。次に知らない人間の声で同じように録音したものを聞かせた。

すると猫たちの多くが飼い主の声を聞くと頭を動かし、耳や尻尾をぴくぴくさせたが、やがて興味を失った。

ところが自分の名前が呼ばれるとまた耳をそばだてた。

つまり、猫は飼い主の声と、意味は分からなくても聞き慣れた単語を識別できるというわけだ。

猫の身になって考えてみる

猫は人間の言葉のイントネーションにも注意を払っている。

パリ・ナンテール大学(パリ第10大学)のシャルロット・ドムーゾンらの研究チームは飼い主が猫に話しかける声を録音。すると、多くの飼い主が高い声の赤ちゃん言葉で話しかけていることが分かった。

そこで飼い主に高い声と普通の声で話してもらい、飼い主以外の声でも同様に録音した。

猫たちの反応はすぐには気付かないほど微妙だった。

後で録画をチェックしてみると、猫たちは飼い主が高い声で話すのを聞いたときのほうが反応して耳や尻尾を動かしたり、周囲を見回したり、じっとして動かなくなったりしていた。

飼い主以外の声にはそうした反応は示さなかった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:トランプ関税で荷動きに懸念、荷主は「

ワールド

UBS資産運用部門、防衛企業向け投資を一部解禁

ワールド

米関税措置の詳細精査し必要な対応取る=加藤財務相

ワールド

ウクライナ住民の50%超が不公平な和平を懸念=世論
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中