「猫も人間が好き。ただ犬より愛情表現が分かりにくい」最新科学が解き明かす猫の本当の気持ち

THE MIND OF A CAT

2023年12月28日(木)17時26分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

231114P18NW_NKO_10.jpg

猫もシグナルを出しているが微妙で独特なので、気付くにはコツが要る BRAUNS/ISTOCK

確かに多くの猫は気難しい可能性がある。

だが相手が猫の場合でも、相手の身になって考えてみれば多くの問題は解決できる。

猫の認知研究という新たな学問が示唆するように、猫は人間のことを気にかけている。ただ、その示し方が独特なのだ。

猫は程よい距離を必要とする場合もある。

例えば犬が長時間のスキンシップを好むのに対し、猫は概して「緩い」けれども頻繁な社会的交流を好むとデルガドは言う。

また多くの人間は猫の胸やおなかをなでたがるが、猫はその辺りを触られるのを嫌がる。

「研究によれば、自分から猫に近づくのではなく、猫が近づいてくるようにしたほうが、いい関係が長続きする。ほとんどの人は『私は猫が好きだから猫も私を好きなはず』と考えがちだが、猫は支配欲が強い。自分で仕切りたがる。自分の思いどおりにしたがる。嫌だと感じたら、その場から離れたり逃げたりできるようにしておきたいのだ」

食事についても、猫は犬と動機付けが違う。

猫は確かにごちそうを喜ぶが、餌をくれる人間と友達になりたがるとは限らない。

猫は「ちょこちょこ食い」になりがちで、自分で捕まえた獲物と同じように餌を少し食べては残りを取っておき、後でまた食べるのが好きだ。

餌目当てではないので、犬のようにごちそうで釣って訓練するのは無理なことが多い。

「ご褒美」次第で訓練も可能

だからといって猫は駄目というわけではないと、ビターリは言う。条件が整っていれば犬と同じように訓練できる。「猫は訓練できないというのは迷信にすぎない」

それを証明するべく、ビターリは猫55匹(飼い猫23匹と保護猫22匹)を1匹ずつ2時間半隔離した後、餌、おもちゃ、アレチネズミやイヌハッカなど猫が好む匂い、人間との交流(なでる・遊ぶ・赤ちゃん言葉で話しかけるなど)のどれかを選ばせた。

猫を中心にして同じ距離の場所に4つの選択肢を置いたところ、38匹がどれか1つを選択。

そのうち人間との交流を選んだのは19匹(約50%)で、14匹(約37%)が餌、4匹がおもちゃ、1匹が匂いを選んだ。

それぞれの猫がどんなご褒美を好むかが分かると、お座りや輪くぐりなど犬にできることの大半を猫にも訓練できるようになった。

ビターリは研究結果を17年に学術誌ビヘイビアラル・プロセシズに発表した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、1カ月半内にサウジ訪問か 1兆ドルの対

ビジネス

デフレ判断の指標全てプラスに、金融政策は日銀に委ね

ワールド

米、途上国の石炭からのエネルギー移行支援枠組みから

ビジネス

トランプ氏、NATO加盟国「防衛しない」 国防費不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中