「猫も人間が好き。ただ犬より愛情表現が分かりにくい」最新科学が解き明かす猫の本当の気持ち
THE MIND OF A CAT
もっとも、答えを見つけるのは難しかった。研究チームのメンバーが飼い主の家に行くと、猫たちは見知らぬ人を前に椅子の下で固まったり、協力を拒んだりした。実験を数回やったら興味を失う猫もいた。
苦労して集めた結果は奥深いことを示唆していた。
猫は乳幼児のように、あるいは猫と同じく人間の家庭で生き延びることに成功した唯一のペットである犬のように、指差しの合図に反応して隠された食べ物を見つけることができたのだ。
ポングラッツらが18年に発表した研究結果によると、70%の猫が人間の視線を追って、隠された食べ物を見つけることができた(研究チームは85匹の飼い猫の家を訪問し、そのうち44匹は最初は協力を拒んだり、24回繰り返した実験の途中で飽きてしまい脱落した)。
「犬はより社会的で、猫はより独立性と自律性がある」と、ポングラッツは言う。
「しかし、犬も猫も人間と一緒に暮らす能力を身に付けた。正式な訓練を受けなくても、一緒に暮らしている特定の人間の家族やグループの主なルールをすぐに覚えることは、猫と犬の基本的な特徴だ。私たちは一緒に暮らしながら、常に言葉やジェスチャーでコミュニケーションを取っている。そして、彼ら動物は私たち人間にとても注意を払っている」
猫が社会的知性を持つという証拠は近年、着実に積み重ねられている。
京都大学の高木佐保(現・麻布大学獣医学研究科特別研究員)らのチームが21年に行った実験では、飼い主もしくは知らない人が名前を呼ぶ声を録音して猫に聞かせた後に、顔写真を見せた。
すると、飼い主の声の後に知らない人の写真、あるいは知らない人の声の後に飼い主の写真という一致しない組み合わせの場合、猫は写真をより長く見ていた。これは、猫の頭の中に飼い主の視覚イメージがあることを示唆している。
実験ではさらに、部屋の複数の場所に設置したスピーカーから飼い主の声を流したところ、声が予想以上に早く室内を移動すると、猫は周囲を見回したり、耳をピクピクさせて驚いたりした。
これは彼らが注意深く耳を傾け、飼い主がいるはずの場所をイメージできることを示唆している(これらの猫には嫉妬する能力もあり、「飼い主が以前になでていた柔らかいおもちゃの猫に、より強く反応した」という)。