「猫も人間が好き。ただ犬より愛情表現が分かりにくい」最新科学が解き明かす猫の本当の気持ち

THE MIND OF A CAT

2023年12月28日(木)17時26分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

231114P18NW_NKO_03v2.jpg

KISZON PASCAL/GETTY IMAGES

もっとも、答えを見つけるのは難しかった。研究チームのメンバーが飼い主の家に行くと、猫たちは見知らぬ人を前に椅子の下で固まったり、協力を拒んだりした。実験を数回やったら興味を失う猫もいた。

苦労して集めた結果は奥深いことを示唆していた。

猫は乳幼児のように、あるいは猫と同じく人間の家庭で生き延びることに成功した唯一のペットである犬のように、指差しの合図に反応して隠された食べ物を見つけることができたのだ。

ポングラッツらが18年に発表した研究結果によると、70%の猫が人間の視線を追って、隠された食べ物を見つけることができた(研究チームは85匹の飼い猫の家を訪問し、そのうち44匹は最初は協力を拒んだり、24回繰り返した実験の途中で飽きてしまい脱落した)。

「犬はより社会的で、猫はより独立性と自律性がある」と、ポングラッツは言う。

「しかし、犬も猫も人間と一緒に暮らす能力を身に付けた。正式な訓練を受けなくても、一緒に暮らしている特定の人間の家族やグループの主なルールをすぐに覚えることは、猫と犬の基本的な特徴だ。私たちは一緒に暮らしながら、常に言葉やジェスチャーでコミュニケーションを取っている。そして、彼ら動物は私たち人間にとても注意を払っている」

猫が社会的知性を持つという証拠は近年、着実に積み重ねられている。

京都大学の高木佐保(現・麻布大学獣医学研究科特別研究員)らのチームが21年に行った実験では、飼い主もしくは知らない人が名前を呼ぶ声を録音して猫に聞かせた後に、顔写真を見せた。

すると、飼い主の声の後に知らない人の写真、あるいは知らない人の声の後に飼い主の写真という一致しない組み合わせの場合、猫は写真をより長く見ていた。これは、猫の頭の中に飼い主の視覚イメージがあることを示唆している。

実験ではさらに、部屋の複数の場所に設置したスピーカーから飼い主の声を流したところ、声が予想以上に早く室内を移動すると、猫は周囲を見回したり、耳をピクピクさせて驚いたりした。

これは彼らが注意深く耳を傾け、飼い主がいるはずの場所をイメージできることを示唆している(これらの猫には嫉妬する能力もあり、「飼い主が以前になでていた柔らかいおもちゃの猫に、より強く反応した」という)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中