中印国境に軍隊を送る幹線道路、インド方面にも中国の拡張主義
China Builds New Highway Near India To Move Troops for Border Standoff
新疆ウイグル自治区で訓練用の砲弾を運ぶ人民解放軍兵士。向かいはインドのラダック地方(7月3日) CHINA MILITARY NETWORK
<20万人の中印両軍がにらみあう係争地帯の近くに、兵士と後方支援を輸送する幹線道路が完成した>
中国がインドとの国境近くに建設している幹線道路の完成が近づいている。アジアの2大国である中国とインドは軍事的対立を続けているが、この道路が完成すれば、中国は紛争発生時に人民解放軍を迅速に派遣することができるとみられる。
現在、中印間の国境紛争地域では、実効支配線が中国支配地域とインド支配地域を分けているが、インドのラダック地方の東側の地域に関して、中国は長い間、新疆ウイグル自治区とチベット自治区を結ぶ国道G219号線というというアキレス腱に頭を悩ませてきた。中国の西と南の国境沿いを通るこの道路は、インドと係争地域であるアクサイチンを通過するのだ。
中国の軍事戦略家たちにとって、インドとの紛争が発生した場合、G219号線が使えなくなる可能性があることは、長年の大問題だった。自国の領土を隅々まで守ると宣言した習近平国家主席の下、中国はこの弱点を解消するべく国道G216号線という代替ルートの建設に着手した。
インドとの紛争が起きた場合、中国軍の部隊を戦場にダイレクトに送り込むための道路網の一部として中国政府がG216号線の建設を発表したのは、2022年7月のことだった。そこには「新疆ウイグル自治区からチベット自治区への戦略的基幹道路」の構築という目的もあった。
紛争に備えた道路建設
「この道路は中印国境にかなり近い」と、当時ある中国人ブロガーは指摘し、インド外務省から厳しい抗議があるだろうと予測した。
本誌が公開されている現地の映像を分析したところ、完成したG216号線の新区間はすでに、新疆ウイグル自治区を横断する旅行者が利用できるようになっていた。
中国の国営放送CCTVは11月、新疆ウイグル自治区のウルムチと玉里県をつなぐ、現在世界最長とされる新しいトンネルの開通を祝った。中国のソーシャルメディアアプリ新浪微博(ウェイボー)では11月下旬、国のインフラが「天山(山脈)を突破しようとしている」と宣言するハッシュタグがトレンド入りした、
だが、祝賀イベントの背後では、G216号線とインド国境沿いの紛争地域とを結ぶ中国政府の計画が着々と進行していた。インターネット上の映像を見れば、この新しい国道はインドがラダックの一部と主張するアクサイチンの近くを通っていることがわかる。
G216号線は、北はアルタイ県を起点に天山山脈を越え、新疆ウイグル地区の町バルンタイまで、全長532マイル(856キロ)に及ぶ。また、この路線の新しい区間は、新疆ウイグル地区の首府ウルムチからチベットを経由して雲南省南西部のミャンマー国境附近の瑞麗に至る。