ハマスはイスラエルに「必要」な存在だった...パレスチナ「75年間の歴史」で、紛争を基礎から理解する
Vengeance Is Not a Policy
イスラエルは、ガザ(あるいはパレスチナ)を国家として承認しているわけではない。その住民を統治する正当な権力者として、ハマスを承認しているわけでもない。
この攻撃に対するイスラエルの最初の対応は、ガザへの電気、食料、医薬品、水などの供給を遮断するというものだった。どんな国も他国にそのようなことはできないが、自らが取り囲んで支配している領域に対してはできる。
イスラエルにガザは必要か
ガザを「超過密なイスラエルの監獄」とする見方をとっぴだと決め付ける前に、イスラエルの実際の刑務所がどうなっているかを考えてみよう。
収容者の大半がパレスチナ人である刑務所では、看守ではなくパレスチナの囚人組織が仕切っている。イスラエルの刑事司法制度に詳しい人なら、これが事実だと知っている。ハマスが内政を支配するガザ地区として知られる約365平方キロの監獄も、同様にイスラエル国内にある。
脱獄囚がどれだけ残忍になれるのか。刑務所の反乱がいかに冷酷に鎮圧され、結果として暴力に無関係な多くの受刑者がいかに苦しむのか。それらは誰もが知っている。私たちは前者を既に目撃し、いま後者を目撃している。
しかし刑務所の反乱は、そこがいかに非効率的に、残酷に、そして非生産的に運営されているかを示す生々しい証拠でもある。反乱は常にではないが、しばしば刑務所改革や、場合によっては刑務所の閉鎖につながる。
「ガザ監獄」の場合、これが必要だ。イスラエルは決断を迫られている。イスラエルにガザが不要ならば国連に引き継がせ、イスラエルからの賠償金、湾岸諸国の資金、国際的な安全保障支援により、ガザが実現し得る最善の未来に向けて援助すべきだ。
イスラエルがガザを維持したいなら、20年1月にドナルド・トランプ米大統領(当時)が提唱したパレスチナ人のための計画の中にあるとおり(無視されがちな部分だが)、イスラエル南部ネゲブ砂漠の居住者の少ない一帯を、そこに祖先の家があった数十万人のガザ人に開放すべきだ。そして統治国であるイスラエルの市民生活に参加する権利を、平等に与える必要がある。
いま地中海とヨルダン川の間には、ユダヤ人よりもアラブ人のほうが多く住んでいる。彼らがどのように共生するか、そして共生することが最終的に彼らの共有する国家の名前と性格にとって何を意味するかは、非常に難しい問題だ。
それでもこれらは、いま抱えている問題より、そして、このまま大惨事という恐ろしい結果だけに対処し、その原因に対処しないことで将来抱えることになる問題よりはましだ。