最新記事
ウクライナ情勢

「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最凶部隊「ストームZ」10万人を送り出すプーチンと「生還後の悲惨」

Putin's Suicide Squad

2023年12月19日(火)14時00分
イザベル・バンブルーゲン(本誌記者)

プーチンが恩赦を与えた犯罪者には、22年に23歳のタチアナ・レクティナをレイプし、殺害した罪で懲役20年の刑に処されたアルテム・ブチンもいる。この男は8月にウクライナの前線に送られたが、11月に故郷に帰還している。

27歳のタチアナ・メレヒナを絞殺し、遺体を肉ひき機にかけた罪で懲役11年の判決を受けたドミトリ・ゼレンスキーもウクライナで戦い、この夏に無罪放免となった。

しかし、こうした殺人鬼の赦免にはロシア国内でも異論があるようだ。

例えば、23歳の元恋人を殺害した罪で服役中だったウラジスラフ・カニウスの場合だ。カニウスは20年にシベリア西部のケメロボ州でベラ・ペクテレワを殺害したとして、22年7月に懲役17年の刑を言い渡され、重警備刑務所に収監されていた。

「彼女を殴っていたとき、叫び続けるのが気に入らなかった。だから黙らせたかった」。カニウスは被告人質問でそう述べている。法廷記録によれば、被害者には顔面を含めて111の刺し傷があった。

この男の赦免には世論が激しく反発し、SNS上に批判が噴出した。しかしプーチン政権の報道官ドミトリ・ペスコフは11月10日に、こう言い放っている。この者たちは刑罰を免れたのではなく、「戦場で突撃し、銃弾の下、砲弾の下で、自らの罪を血であがなっている」のだと。

プーチン自身も、「彼らは祖国に命をささげることで免罪された」と述べている。

スターリン時代と同じ

英王立統合軍事研究所(RUSI)国際安全保障研究ディレクターのニール・メルビンによれば、プーチンは24年3月の大統領選を控え、大規模な追加動員令で評判を落とす事態を避けるため、刑務所から人材を調達して兵士を増やす方法を採っている。

プーチンは12月8日に大統領選への出馬の意向を表明した。しかもウクライナ戦争の前に憲法を修正しているから、当選すればプーチンは最大で36年まで政権を維持できる。

「プーチンが選挙で負ける心配はないが、政府としては選挙中に不満が噴き出したり、戦争反対の声が上がる事態は避けたいだろう」。メルビンは本誌にそう語った。

「だから国内でも西部の大都市に住む有権者にまで影響を与える大規模な動員はやれない。その代わり東部の辺境に住む人や少数民族、そして囚人から兵員を調達している」

試写会
『シンシン/SING SING』ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米民主党主導州、トランプ政権の教育省廃止の停止求め

ワールド

EU産ワインに200%関税も、トランプ氏が対抗措置

ワールド

ウクライナ停戦巡る米提案に同意、紛争の主要因排除の

ビジネス

米の年内利下げ、2回に予想引き上げ=バークレイズ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 8
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 9
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 10
    『シンシン/SING SING』ニューズウィーク日本版独占…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中