最新記事
ウクライナ情勢

「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最凶部隊「ストームZ」10万人を送り出すプーチンと「生還後の悲惨」

Putin's Suicide Squad

2023年12月19日(火)14時00分
イザベル・バンブルーゲン(本誌記者)
ウクライナ側の捕虜となったロシア兵

ウクライナ側の捕虜となったロシア兵には傭兵や囚人も含まれる(リビウの収容所、23年8月) PAULA BRONSTEIN/GETTY IMAGES

<刑務所が空っぽになったスターリン時代と同じく、恩赦と引き換えに凶悪犯が戦場へ。戦場を生き延びた彼らが街に戻ってきたら...>

もう10年ほど前のことだが、泥沼化するシリア内戦にアメリカが介入し、反政府派の勢力に武器の供与を決めたとき、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は真顔でカニバリズム(人肉食)への嫌悪感を表明し、こう言った。

「殺した敵の腹を裂き、その臓物を食べ、その行為を動画で公開するような連中を支持する理由などない」。そしてアメリカ人に、こう呼びかけた。

「こんな奴らを、諸君は助けるのか? こんな奴らに武器を送るのか?」

だがプーチンは、その後の歳月でカニバリズムを許容するようになったらしい。彼は旧ソ連のスターリン時代の流儀に倣って大量の殺人犯を監獄から解き放ち、ウクライナの戦場に「肉弾」として送り込んでいるが、その中に少なくとも2人、過去に人肉を食べた者がいる。

2022年2月24日に隣国ウクライナへ侵攻を開始して以来、ロシアは何万もの受刑者を軍隊に編入し、通称「ストームZ」部隊の一員として最も危険な前線に送り込み、使い捨ての歩兵として利用している。

【動画】見るからに極悪そうな「ストームZ」の兵士たち を見る

ロシア政府はストームZの存在を認めておらず、軍隊に編入した囚人の数も明らかにしていない。だが本誌の知り得た限りでも、ウクライナで半年間の軍務に就くことを条件に釈放された受刑者は10万人を超えている。

しかも、そのほぼ半数は生き延びて祖国に戻り、大手を振ってロシアの街を歩いている。

本誌は軍隊に編入された囚人リストの一部を入手したが、そこには定年過ぎの人も含まれていた。また受刑者の人権擁護団体「檻の中のロシア」のオリガ・ロマノワによれば、その半数以上はロシア民族以外の少数民族だ。

そうであれば、彼らはまさに使い捨て。あるロシア兵は去る10月、ロイター通信の取材に応じて「奴らは単なる肉弾」だと語り、ストームZの部隊は通常100~150人規模で、恩赦を得た受刑者と軍規違反に問われた正規兵で構成されると明かした。スターリン時代のソ連の服役者軍団と同じだ。

悪魔崇拝者も社会復帰

米シンクタンクの戦争研究所(ISW)はロシアのある軍事ブロガーの書き込みを引用する形で、ウクライナ東部のアウディーイウカやバフムート周辺に配備されたストームZの部隊は実戦で数日しか持たず、兵員の40~70%が失われていると指摘した。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中